2014.03.23 Sun
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人は生まれ、人の手によりケアされて育つ。家族は、子どもや高齢者など、ケアを必要とする依存的な他者をケアし、育ててきた。近代家族は、この「依存の私事化」によって成立した。
家族の絆は、「ケアの絆」といえる。子どもや高齢者などケアを必要とする個のケアをする家族の意義は、今日に至るまで滅していない。
近代社会の法は、自己決定できる個人、すなわち責任能力のある個人を法的主体として措定している。では「法的主体となさない存在、すなわち依存的な他者は、どこへ?」というと、市民社会の外部に配置し、その領域を「家族」と呼んできたのだ。
「あなたにとって家族とはどの人をさしますか?」という問いに、疑問を抱く人も少なくないだろう。それまでの家族の定義要件は、居住、血縁、性、家計、家業、家名・家産などの共同があった人たちを指していた。しかし今、家族の臨界が見え隠れする。
核家族、児童虐待、地域の子育て力の低下、シングル・ペアレント・ファミリーの増加、家族機能の弱まり―私たちをとりまく社会は、近代化とともに、家族のいわば主翼が削ぎ取られ、ダッチロールの様相を呈している。
家族が拠りどころにしてきた主翼とはなんであったか、考えてみたい。近代家族を形成する個人が、背負わされてきた重荷と引き換えにしても死守したかった絆とは?その場所で個人が取捨したものはなんであったかを検証し、家族の可能性をつないでいきたい。
近代家族の幻影はもう、遠い空に消えていた。ケアの絆に結ばれた家族という根幹をとらえて、わたしたちは新たなる生の居場所を拓いていく。
堀 紀美子
新曜社
2011年4月 出版
『家族を超える社会学 新たな生の基盤を求めて』上野千鶴子他著 牟田和恵編
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