上野研究室

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自助・公助・共助とは ちづこのブログNo.69

2014.05.01 Thu

朝日新聞にこんなコラムを書いています。わたしのhome town金沢版限定。なので、みなさまのお目に触れないようで。以下ご紹介。
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自助・公助・共助とは

前政権は「共助」が好きだった。現政権は、「自助」がお好き。自分でできることはできるだけ自分でやるべし。どちらも「公助」はお嫌いらしい。
公助と言えば、自助能力のない人にさしのべられる最後のセーフティ・ネット。生活保護のような公的福祉をいう。そういえば、お金をかせいでいる芸人の母親が生活保護を受けている、というのでバッシングを受けたのは、記憶に新しい。

自民党の憲法改正草案を検討する機会があった。現行憲法の24条に「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」とあるところを、自民党草案ではそれに「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない」が加わった。
家族が「自然」なら、家族からはみだした人、家族をつくらない人たちは「不自然」な存在なのか、おいおい、とつっこみをいれたくなるが、それはさておき。
現憲法では「夫婦の間の協力」だけを規定しているところに、「家族の間の助け合い」が加わった。今でも民法には、直系親族間の扶養義務と扶助義務とがある。するってえと、例にあげた芸人などは、母親を扶助しなかったことで「憲法違反!」となるのだろうか?
家族の間といっても、愛も憎もある。親に虐待されて育った子どもでも、親を助けなければならないのだろうか?
民法の相続規定には、誰に遺産を残したいかという遺言の権利のなかに、「この人だけには相続してほしくない」と逆指名する権利もある。
それだけでなく、「家族」っていったいどこまでの範囲を言うのだろう?超高齢社会だから、孫だけじゃなくてひ孫、やしゃご?そして別居した兄弟姉妹、甥姪?同居しているが赤の他人の嫁は「家族」なの??疑問だらけだ。

先日、学生に「家族の助け合い」は、「自助・公助・共助のうちのどれにあたる?」と聞いたら、答が圧倒的に「共助」だった。彼らにとって「自助」はあくまで「自分で自分を助けること」。親の家を「実家」と呼ぶ彼らのことだ、家族は他人の初め、他人が助け合いをしたら、そりゃ「共助」だろう。何より、家族の支える力が脆くなっている。親にも余裕がなくなっていることを、彼らは知っている。
自助がこんなに切り詰められた時代。自助を強調するほど、個人も家族も追い詰められるだろう。自民党草案、家族を大事にすると見せて、その実、こわすのに手を貸していないだろうか?
(『朝日新聞』石川版 2013年11月9日”連載「北陸六味」”から)

カテゴリー:ブログ

タグ:貧困・福祉 / 非婚・結婚・離婚 / 上野千鶴子

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