2014.06.18 Wed
「主婦に思想があるか、ですって?もちろん、ありますとも」
伊藤雅子さんの新刊、『女のせりふ』『続女のせりふ』(福音館書店、2014年)は『母の友』に1985年から2012年まで続いた長期連載を単行本にしたもの。その2冊同時刊行にあたって、頼まれてわたしが解説を書いた。そこから帯に採られた文章である。
その解説を出だしだけ、ちょっぴりご紹介。
営業妨害になるから、これから先を読みたい方はぜひ本書のお買い求めを。
いえいえ、うえのの解説より、伊藤さんご自身のあったかくてちょっぴりしんらつで、するどい観察眼と共感に満ちた文章を味わっていただくために、本書をアマゾンで注文しましょうねっ。
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解説「女のせりふ」がつくる主婦の思想
一九六五年。この年を憶えておこう。
国立市公民館で日本で初めての託児つき講座が実施された年。実現したのは、当時、その公民館職員だった伊藤雅子さん。国立といえば「こくりつ」と呼ぶのだと思いこんでいたわたしは「こくりつし」ってヘンだな、と思い、あとになって「くにたち」というのだと知り、最近になって国分寺と立川のあいだにあるから「くにたち」というのだと知るにいたった。そして国立市は、伊藤さんのこの事業のおかげで、忘れられない土地になり、一九六五年は忘れることのできない年になった。歴史はこうやって変わる。憶えておかなければならない年号は、明治維新や東京五輪の年ばかりではない。
公民館といえば、ウィークデーの昼間に開いているところ。そんなところに出入りできるひとは、無職のひまなひとたちばかり、といえばお年寄りと主婦になるが、子どもがいたらそれすらままならない。その子どもをひっかかえて出てきたいおんなのために、託児つき講座を思いついたのが伊藤さんだ。
子どもが生まれたらおんなは家にいて育児に専念するのがあたりまえ、出歩くなんてとんでもない、と思われていた時代のことだ。周囲が反対しただけではなく、子どもを預ける若いお母さんたちまでが、わずか午前二時間の講座の時間に「子どもを預けてまで勉強したいと思うなんて、わたしは悪い母親なのかしら」と自責の念にかられたと聞いて、胸が痛む。それから五十年。女性センターで催しがあるときには託児がつくのはあたりまえになったし、講演会やコンサートにも託児付きが登場した。今では学会にも託児付きがある。デパートや居酒屋にまで託児付きが登場して、びっくりしたものだ。託児付き講座が「常識」になるまで、どれだけの時間がかかっただろうか。その最初の扉を開けたひとが、伊藤さんなのだ。
(後略)
参考文献:国立市公民館市民大学セミナー『主婦とおんな 国立市公民館市民大学セミナーの記録』(未来社、1973年)
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