上野研究室

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「壊憲」記念日 ちづこのブログ No.76

2014.10.14 Tue

日弁連主催「閣議決定撤回!憲法違反の集団的自衛権行使に反対する」10・8日比谷野音大集会&パレードに、上野も参加しました。すでにその様子はWANサイト上にスライドと動画でアップされておりますが、その日、壇上で上野が語ったスピーチの原稿を、以下に公開いたします。
「サラダ記念日」のパロディの短歌もどきは、朝日新聞天声人語(10月11日付け)でも紹介されましたので、すでにご存じの方も。7月1日は解釈改憲の閣議決定が行われた日です。

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10.8は、わたしには特別な日です。47年前のこの日、山崎博昭くんが羽田闘争で亡くなりました。山崎くんは京都大学のわたしの同期生でした。彼の死を受けて、山崎くん追悼デモに参加したのが、わたしの生まれてはじめてのデモ体験でした。あと3年で山崎くんの死から50周年になります。その間に、わたしは高齢者の仲間入りをしましたが、山崎くんは19歳のまま、彼の時間は永遠に止まったままです。
10.8は、反戦闘争でした。あの当時、ベトナム戦争は日本人にとって近く、日本はアメリカの戦争協力者でした。アメリカの戦争の共犯者になりたくない、あの当時にはそういう切迫感がありました。ベ平連こと「ベトナムに平和を!市民連合」の活動も、反戦運動でした。その前の1960年の安保闘争も、反戦闘争でした。まだ戦争の記憶が生々しかった頃です。あれから半世紀以上たって、日本国民の5人に4人が戦後生まれになったというのに、わたしたちは再び他人の戦争に巻きこまれようとしています。集団的自衛権は、わたしたちをアメリカの戦争の共犯者にするものです。イラクではイスラム国を名のる武装集団が、フランス人やイギリス人を敵国人として「処刑」しています。アメリカの戦争に参戦すれば、日本人もイスラム国の「敵国人」となるでしょう。
来年は戦後70年。わたしたちは「戦後」をずっと続けてきました。この戦後を、「戦前」にしてはなりません。

憲法を解釈だけで変えられる だから7月1日は「壊憲」記念日

「壊憲」の「壊」は破壊の「壊」です。憲法はすでに今の政権によって「破壊」されつつあります。
解釈改憲の根拠として菅官房長官が持ち出した砂川判決は、最高裁にまでアメリカが政治介入したことが、歴史的にあばかれつつあります。司法の中立性が損なわれた判決だったのに、それを解釈改憲の根拠にするとはとんでもありません。司法がみずから司法に対する信頼を失わせるようなふるまいをすれば、日本は法治国家ではなくなります。最近、司法への信頼を回復するような画期的な判決がありました。大飯原発差し止め訴訟をめぐる福井地裁の判決です。判決文は、「生命の価値と経済活動の自由とをてんびんにかけてはならない」とはっきり言いました。司法に良心があったことを示す判決でした。
本日の集会は日弁連の主催です。法曹の専門家たちの集団には、法に対する信頼をとりもどす責任があります。法が政治に左右されるほど空疎なものならば、皆さん方には自分の職業に対する誇りさえ持ち続けることができないでしょう。内閣法制局の長官もそのもとで働く職員たちも、法の専門家です。彼らは自分の仕事に誇りを持たないのでしょうか。
わたしたちはいま、立憲主義も法治国家も民主主義も骨抜きにされる危機に立っています。こんな世の中をのぞんだわけではなかったのに、いったいどうしてこうなってしまったのでしょうか。山崎くんの死から50年たって、彼に申し訳ない思いです。かつて私たちが若者だった頃、こんな世の中に誰がした、と大人たちに詰め寄りました。今、わたしたちは、こんな世の中に誰がした、といまどきの若者に詰め寄られたら、言い訳ができません。あのとき、あなたはどこで何をしていたの、どうして戦争を防げなかったの、と問われたら、応えられないような大人にだけはなりたくない、と思い続けてきた初心に、いまこそ立ち返りたいと思います。

カテゴリー:ブログ

タグ:憲法・平和 / 憲法 / 上野千鶴子 / 反戦運動 / 平和運動

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