2011.05.16 Mon
★日本のフェミニズム:第1回/『リブとフェミニズム』★2011/5/7開催
朝日カルチャーセンターで五月から開催の、≪シリーズ日本のフェミニズム≫。第一回目は「リブとフェミニズム」で、講師は社会学者の上野千鶴子氏。これから年間通して、全12巻の講座がひらかれる。
第一回目は、『新編 日本のフェミニズム』全12巻というアンソロジーの編集方針を、全巻冒頭にある「編集にあたって」から概観しました。
編集方針は、おおまかにいうと、”女性の問題を、女性の著者が、日本語で書いた、紙媒体の出版物”、というくくり。こうしたくくりは、1994年に『日本のフェミニズム』を編纂したときはまだ可能であったものの、15年経つうちのグローバリゼーションの進展により、この『新編 日本のフェミニズム』では「日本語の発信者」という限定をはずさざるをえなかった、とのこと。
また、新編の編集にあたっては、インターネットなど「非紙媒体」についても割愛したし、男性のジェンダー研究者の文章も、「男性学」の巻以外は採用しなかった。なので、もし今後、”日本のフェミニズム”といった包括的なアンソロジーを編むとしたら、外国語の文献、非紙媒体のものも視野に入れるべきだろう。また、いわゆる「性別」というくくりも外すべきかもしれない。となると、文献の守備範囲が膨大で、どんな編者でも手にあまるだろう。
新編を編みながら、上野千鶴子氏には、これが”日本のフェミニズム”についての最後のアンソロジーになるだろう、といった思いがあったそうです。そんな、アンソロジーを編めない(であろう)若い世代に、上野先生は「フェミニズムを手渡すためのアンソロジー」と表現します。「民主主義」が「広げる」というのとくらべて、「手渡す」というのは、人間サイズでかわいらしい思想に感じます。たぶん、かわいがられてきたのでしょう。
講座では、リブの闘士のひとたちが、活動のビラをすてがたく、〈いくたびかの引っ越しをくぐりぬけ、押し入れの一角をいつも占めて〉持ち運んで保存してきた、との思いを綴った文章のコピーが配られました。
〈黄色く変色してボロ紙同然になっても、なお捨てられなかったのは、それがわたし自身であったから〉。
この「捨てがたいわたし自身」が、『新編 第一巻 リブとフェミニズム』に収録されているのです。
この話は、ちょっと感動的。紙媒体は黄ばむところがすてきです。
最後の質疑応答のひとつに、「上野先生はなぜ早期退職されたのですか」という質問がありました。「退職なら聞かれないのに、わずか数年でも早期だと、「なぜ」と聞かれるんですよね。理由はいろいろありますが…、若い世代のキモチがわからなくなったら、辞めようと思ってました。子の世代までは分るが、孫の世代まではね」と。
キモチがわからないリブ世代の思想を、どううけとったものでしょう。キモチ抜きのリブの思想って、どうも、ツマラない気が。う~ん。など、色々かんがえた初回でした。
■杵渕里果(受講生)■
カテゴリー:拡がるブックトーク2011
タグ:女性運動 / 本 / 上野千鶴子 / インターネット / 朝日カルチャーセンター / 受講生レポート / リブとフェミニズム / アンソロジー / 日本語の発信者 / 男性のジェンダー研究者 / リブ世代
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