2011.12.29 Thu
朝日カルチャーセンター★受講生レポートNO.17】「日本のフェミニズム」
★日本のフェミニズム:第7回/『グローバリゼーション』★2011/11/19 伊藤るり先生
≪シリーズ日本のフェミニズム~グローバリゼーション≫
講義はディスカッション形式で進行しました。
「ウォール街のデモは何を要求してるの?」
⇒ A:格差反対
「なんでウォール街を選んだの?」
⇒ A:金融企業が集まってるから。
「なんで金融企業なの?」
⇒ A:実体経済とかけ離れた市場取引で、あらかせぎしすぎてるから。
「では、ギリシャの反政府デモは?」
⇒ A:国家が債務(借金)返済のために講じる緊縮策への抗議。ディスカッション形式、とはいえ、受講生がディスカッションに不慣れなため、実は伊藤るり先生の一人二役的な質疑応答で進行しました。でも質問されるたびにハタと考えたおかげで、ばらばらに見ていたニュースがなんとなくつながってきました。
「冷戦終結以降、グローバリゼーションは急速に展開し、トランスナショナルに活動する大企業により市場至上主義が世界を席巻。しかしそれに対して、地域的な単位をとる「国家」、その国家の集合である「国連」といった政治の領域が、大きく立ち遅れているのです。」
その国連とともに歩んでいたのが、70~90年代のフェミニズム。国内で「ウーマン・リブ」の活動がさかんだった75年、国連は「国際女性年」を定め、以後五年ごとに「世界女性会議」を開催してきた。
そうした会議の成果のひとつが、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」(2000年)。日本と韓国両政府がフタをしてきた戦争による女性の被害に、はじめて法的な視線が浴びせられたのです。
伊藤先生の学部ゼミ生が、松井やよりさんのグループのボランティアとなって、北京世界女性会議のNGOフォーラムに参加したとのこと。フォーラムでは多くの分科会が開かれ、学生たちは、予定表を見ながら、連日どの分科会に行くかを相談して参加し、会場の外でも各国の女性がさまざまな集会やデモを行い、なかには相互に対立する主張のデモもあったので、中国の公安当局はそれらが衝突しないよう交通整理に腐心したとのこと。そこで挙手を募る伊藤先生。
「世界女性会議のどれかに、参加したことある人!」
残念ながら、今回の受講生には一人もいません。日本でやるならいきたいかなーと思った。でもその予定はないみたい。
ともかくグローバリゼーションによって、まずは女どうしが国境を越え連携し、自分の国に通せない要求を、NGO経由、国連経由の<外圧>を用いて通すことができた。でもグローバリゼーションが深まるにつれ、今度はその政治の領域が弱まってきている。
あやうし。フェミニズム。
「でも、さいごに少しは明るくなる話もしときましょう」と伊藤先生。
この春、フランスの次期大統領候補最有力といわれた当時のIMF専務理事、ドミニック・ストロス=カーンが、ギニア人のホテルのメイドにセクハラをした。でもその彼女は泣き寝入りせず、このグローバル・エリートの男性を訴え、ドミニクは職を追われることに。
なんでそうできたかというと、ホテルの従業員組合が彼女を支えたから。訴えても仕事を失う恐れがなかったから。
そのように弱い立場の女性を支えるのが、新しいグローバルな社会におけるフェミニズムではないかと。
でも、と思う。その人って、「強い組合のあるホテルに勤めててヨカッタ」と思うにせよ、「女の従業員たちの応援が嬉しい!。さすがシスターフッド」とか「フェミニズムがセクハラを悪いことにしといてくれてヨカッタ」とか、思うのかなぁ。
そこで質問してみました。
「それはフェミニズムの問題というより、職場や組合が、外国人や移民の労働者を差別しないことが重要なんじゃないですか?」
「フェミニズムの問題ですよ」と伊藤先生。
「ホテルの従業員ではわかりにくいなら、家事労働や介護労働の出稼ぎ労働者、これはほとんど女性です。彼女たちの待遇を改善するのは、フェミニズムの問題でしょう?」
うーん。そうか。職業それじたいか。
でもやっぱり、それは「働く人」としての問題で、「女の性別の人」の問題ではないんじゃないか。だってケアワークで海外に単身赴任する「女ならではのケア仕事」や「途上国の各家庭の大黒柱である女」みたいなジェンダー役割を応援するのって、フェミニズム?
いや、グローバルエリートの夫婦(IMF役員ドミニクと超高給キャリア・ウーマンの妻)に、家事を分担して「自分らのことは自分らでやりなさい!」、っていうのが、えーと、フェミニズム???
新しいグローバルな状況のもとでのフェミニズム、というのは、講義でわかった気にさえなれない難しい問題なのでした。
■杵渕里果(受講生)
カテゴリー:拡がるブックトーク2011
タグ:女性運動 / 本 / 世界女性会議 / グローバリゼーション / 朝日カルチャーセンター / 伊藤るり / トランスナショナル / 国際所青年 / 女性国際戦犯法廷 / 日本軍性奴隷制 / 受講生レポート
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