2012.04.21 Sat
朝日カルチャーセンター★受講生レポートNO.23】「日本のフェミニズム」
★日本のフェミニズム:第12回/『男性学』★2012/3/31 伊藤公雄先生
≪シリーズ日本のフェミニズム~第12回・男性学≫
最終回は『男性学』。これ、予想をはるかに超えて面白かった.
なんでも伊藤先生は1989年、「90年代は男性問題の時代になる」と予想したのだそう。70年代からの女性運動とそれに伴う女性の社会進出などの変化をうけて、次の十年はオトコの側の息苦しさが噴出してくるのではないか、と考えたから。
果たして90年代。過労死、過労自殺、熟年離婚に定年離婚。小中学生でも「いじめ自殺」が男子に増加と、オトコとして生きるゆえ息苦しさが、「苦しい」と声をあげないまま数字として噴出していった。
伊藤先生は、男性の労働時間が、80年代、90年代とどんどん長くなっていくグラフをみせ、子どもの詩「お父さんは透明人間」を紹介します。
「この世代の子供のお父さんって「透明人間」なんです。その前の世代の子供は、お父さんと夕食をふつうに食べてたんですよ。」
そうか。そういえば『サザエさん』、ナミヘイもマスオも夕方帰宅してたっけ。
ナルホド。70年代のリブ世代の夫たちやお父さんたちは、夕方六時ごろ帰宅してオヤジ風ふかしてたんだな~。70年代うまれの私としては、リブ世代の女性たちの男への敵愾心に時折ピンとこないものを感じてたのですが、それは私世代の家父長たちが「透明人間」で静かだったからかも?!、って思った。
さてさて。ではなぜ90年代に「男性問題」が噴出したのか?
答え。⇒70年代、オイルショックに端緒する世界的な不況に対し、欧米は女性の労働力を増やすことで対応していったのに、日本は、男性の労働時間をしゃにむに増やすことで対応していたから、です。
「85年の男女雇用機会均等法といっても、同時に配偶者特別控除という“103万の壁”をつくって、“専業主婦がいちばんお得です、女性は働かないほうがよい”と手引きしてたんです。」
その結果として、日本のお父さんたちは、無職もしくはパートの妻を養うべく、過労死・過労自殺しかねない「企業戦士」としてひた走り、「社畜」な人生に陥っていった。一方、女性労働力をふやした欧米先進国は、女性の子育て支援、男性の育休、短時間労働者の平等待遇など、ワーク・ライフ・バランスの施策を着々と培っていったとのこと。
「KAROSHI。あまりに日本的な現象なので、とうとう英語になったんですよ」…トホホ。
それってつまり、先進諸国のうち日本にだけ「男性問題」が噴出してたってこと?! うわー、日本ってアホ!! 「夫唱婦随」への憧憬がヤマイコウコウに入ってる。
しかし過労死、過労自殺、いまや女の「他人ごと(異性ごと)」ではないです。こないだワタミであった過労自殺は女性だったし、私の会社でも夜八時まで髪の毛をプリンにして数字を追う正社員の女の子、たくさんいる。
オンナも、タフでなければ生きていけない。大人の女性たるもの、一面でオトコ(侠)らしく、服従の美徳を理解し、いざ召喚あらばタフな兵隊としてやりとおせ、っていう気分を強く感じます。そんなこと言うとちょっと前までは、「そうはいっても女には逃げ道(結婚)がある」と返されたものですが、そんな常套句、今や疑問符つけなきゃだもん。そういえば小さい頃、母親や担任の先生に、「女の子らしくしなさい」とも言われたけど、「ボーイッシュな女の子ってステキよ」と、若干のオトコラシサを奨励されていた気もします。
「男性学」は、フェミニズム側から「女性のパートナーである男性に、よりよく変わってもらいたい」と期待される側面があったそうですが、今回講義をきいていて、むしろ、女性である私が内面化している「オトコらしさ」や「兵隊」の規範を異化するツールとして、「男性学」にぜひともがんばってほしくなりました。
杵渕里果(受講生)
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