2013.09.07 Sat
9月に入ってもわたしたちを驚かせるような気象が続いていますが、皆さまお変わりないでしょうか?本コラム、毎月「3」の日にアップしているのですが、今回は遅くなりました。おまけに、いきなりですが、ちょっと横道へ。
この「つながるWAN」で、石川敦子さんがしばらく紹介されてきたジェンダー演劇プロジェクト「にじいろちらしずし」。愛知淑徳大学ジェンダー・女性学研究所が今年度、大学から助成をうけて実施している研究プロジェクトです。この、学生たちによる演劇と牧村朝子さんのワークショップに、娘と参加してきました!
最初に告白すると、「演技するのは学生と学生OBで、しかも演劇の経験がない人たちがほとんど」と聞いていましたから、いくらプロの指導が入っても、出来上がるものは学芸会の延長くらい?と、素人頭で思っておりました(陳謝)。それが、脚本と演出の妙もあり、もう、全身で見入るほど面白かったです!まさに「ジェンダーやセクシュアリティに関する固定概念を壊す力」のある、「伝わる」表現でした。
「性」に対する社会的な規範、いつの間にか個人の内に厚く塗りこまれていく刷り込みや思い込み、セクシュアリティへの認識などが、演劇という鏡を使って映し出されると、こんなにはっきりと鮮やかに見え、しかも自分のこととして響くんだなぁ、というのが率直な感想です。おそらく、意識的に男性が女性のセリフを、女性が男性のセリフを話していたと思うのですが、そのために演劇の一つひとつがいつも微妙なノイズを伴ってわたしに届き、既存の固定概念にひびを入れられていくような感覚もありました。学生の皆さんが、ストーリーやネタを集めたというところも、リアルさを増していてよかったなぁ、と思います。セクシュアル・マイノリティについても、何度かストーリーに含まれていましたが、「自分のセクシュアリティに名前がつく。その名前で安易に理解される」ことの違和感など、まさにそうだよね!とうなづく気持ちでした。
わたしも、もう一度見てみたいし、ぜひ多くの方に見ていただきたく、その機会が広がるといいなぁ、と思っています。手始め?には、11月の学園祭で、上演VTRの上映とトークも予定されているとか。ご関心のある方、ぜひチェックしてみてください!ちなみに、娘(中2)の反応は「すごく面白かった!・・・だけど、セクシュアリティって何?」というものでした。セックスの話はしていたけどセクシュアリティはまだだったな、と思ったので、すごくいい機会をいただいた気持ちです。
・・・と、ここまで書いて落ち着いたので(?)、わたしの本題にちょっと戻ります。わたしのテーマはSR(社会的責任)なのですが、今回はCSRからSRへ、というお話(のはず)でした。従来取り組まれてきたCSRの発展系としてのSRは、「持続可能な社会と地球の実現のためには、もはや企業だけではなく、世界中の、あらゆる組織が自らの課題として取り組まなければいけない」という認識から生まれました。国際規格を策定するためのNGOであるISO(国際標準化機構)が、おもに発展途上国側の要請から、2001年にCSRに関する国際規格を定めることになって以来、策定委員会の検討の中で2003年に、Cを外してSRの規格にすることが決まったのです。それが、私が次回お話する(はず)のISO26000ですが、規格の発行は2010年11月1日。なんと、9年がかりで完成した規格なのです!
ここでは詳細は書きませんが、ひとつだけ最初の演劇の話題につながるエピソードを。このISO26000という国際規格は、世界91カ国と42機関が策定に参画し、しかもマルチステークホルダーと言って6つのセクター(政府、産業、労働、消費者、NGO、その他有識者等)から435名が関わったこともあり、「世界的に最も広く合意を得ている、社会的責任に関する規格」だという点が大きな特徴になっています。多数決での決定を割け、徹底的に話し合う方式で議論が進んだのだとか。たいてい、どんなグループだって5人集ったら意見が分かれる(←わたしの主観)のに、435名で合意にたどり着くのは至難の業だったことは容易に推察できます。ここでさまざまに意見が対立した論点のひとつに、「同性愛者である、などの「性的指向」を、人権や労働における差別禁止事項に入れるかどうか」があったということでした。禁止事項にするかどうか、それをどう表記するか、ということで最後まで議論があり、結果「性的指向」ではなく「個人的関係」と表記し、禁止事項に含むことで落ち着いた、というエピソードは、わたしには印象的でした。
最後に、こうした、ISO26000策定の裏話がよくわかる書籍を2冊、ご紹介します。『ISO26000を読む-人権・労働・環境…。社会的責任の国際規格ISO/SRとは何か』(関正雄著、日科技連出版社)と『動き出すISO26000-「組織の社会的責任」の新たな潮流』(熊谷謙一著、日本生産性本部生産性労働情報センター)。ご関心のある方は是非、お手に取ってみてください!(中村奈津子)
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