2013.11.04 Mon
すっかり、秋が深まってきました。このコラム、ひと月に1回しか担当していないのですが、ひと月のなんて早いこと!最初は、「わたし、数字の3が好きだから、毎月3日にアップしていきまーす」なんて言って始めたのが、月が変わって3日が近付くのが恐怖になってきました…(で、今回もいいじゃん?スルーしちゃえば、という自分の声と戦って、日が遅れてのアップです)。とはいえ、皆さんにおそらくなじみの薄い「CSR、SR」を、少しでも「ジェンダー」というキーワードに近づけて書きたい、という意欲で、あと数回は続けたいと思います。
先回、「SRの国際規格ISO26000の策定段階において、「ジェンダー」が大きなテーマの候補の一つだった」、「策定にあたってはジェンダーバランスに配慮した人選が行われ、関わった世界91カ国と42機関から参画した435名のうち、約4割が女性だった」というお話をしました。今回は、策定の途中まで候補にあった「ジェンダー」が、策定された今どこにあるのか、というお話です。
現行のISO26000の中には、「中核主題」として、すべての組織が取り組むべき課題は7つに整理されています。「組織統治・人権・労働慣行・環境・公正な事業慣行・消費者課題・コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」がその7つです。これは、永遠に変わらないわけではなく、最初の合意では発行してから初回は3年後に、それ以降は5年ごとに規格全体の見直しを行うことになっており、必要に応じて修正や改正、廃止などもありうるので、今後、この分類自体も社会の変化と要請に対応して変更していく(はず)と思います。ただ、今年がちょうど策定から最初の3年目にあたりますが、どうやら雰囲気としては修正までには至らず、内容の確認にとどまりそうだ、という話を聞いています。策定から3年ではまだまだ認知の低いレベルで、修正よりも普及を、ということでしょう。
で、検討時に含まれていた「ジェンダー」ですが、今は、それぞれの主題に関連する横断的な課題と整理され、社会的責任の基本的な考え方と規格のコンセプトを示す部分に言及されています(日本の男女共同参画社会基本法みたいっすね)。位置づけは決して軽いものではなく、「男女の平等と社会的責任」(日本語訳。原文は「Gender equality and social responsibility」)というタイトルで特別な解説が付けられています。熊谷謙一さんの『動き出すISO26000』(ご関心のある方は、WAN経由でご購入を!)という著書に比較的詳細に書かれていますので、そこから解説の内容について少し引用すると、ISO26000におけるジェンダーの位置づけは次のような認識です。
「そこ(解説)では、ジェンダー平等の推進が、組織の社会的責任の重要な要素であることを示し、組織のマネジメントでの男女の参加、雇用と報酬での平等、組織の活動での平等、コミュニティ開発での配慮などが強調されている。また、ステークホルダー参加におけるジェンダー平等の意義を強調し、組織が指標と目標、ベストプラクティスを利用することをすすめている」と。さらに「これを受けて、起草委員会は、新しいバージョンの規格案を起草するたびに、ジェンダーの問題をチェックするチームを置いて全文を点検した」ともあります。
ISO26000を、自団体の活動に取り入れている組織は、企業を中心として徐々に増えてきていますが、この部分をしっかり念頭において取り入れている組織は、はたしてどのくらいあるのでしょうか?(あ、ほとんど無いという前提で言ってますー)消費者であり、ステークホルダーの一人として、わたしたちはこの規格をよりどころに組織とコミュニケーションをとっていく可能性を持っている。わたしはそう、この規格に期待を寄せています。(中村奈津子)