「シャーリー&ヒンダ ― ウォール街を出禁になった二人」(Faction Film) ( Two Raging Grannies(原題))
                
                                中西豊子
 

 92歳のシャーリーと86歳のヒンダ、二人の仲良しお婆さんが主役のドキュメンタリー映画。二人は、Raging Grannies(怒れるおばあさんたち) というグループで反戦反核運動をしてきたという。孫もたくさんいる普通のおばあちゃんだけれど、基地のそばで反核運動をして逮捕されたこともあるという活動家。
 
このドキュメンタリーの監督ホバルト・ブストネスは、YouTubeで「Raging Grannies」の活動を知り、取材をするうちに二人と知り合ったという。豊かな表情のおばあちゃんたちの活動を追うと、電動車いすに乗って駆け巡る、その動きは、自由闊達でユーモラスにみえてしまうほど。
 
 皆の暮らしがよくなるには、たえず経済成長をすることが必要だと誰もがいう。だが、いつも経済成長し続けていないと成り立たないという経済の仕組みっておかしいのではないの?地球温暖化も止められないし災害は起きる。地球資源には限りがあるのに、資源を使いまくって経済成長しても、資源が無くなればどうするの?
 
 この仲良しの二人が、こんな疑問から、経済界のやりかたがおかしいじゃないの!これは何とか止めなくちゃと発奮。そのことを伝えにシアトルからニューヨークへと。なんとウォール街へ直行。巨大企業の経営者たちが集まる大パーティに乗り込んでしまう。そんなところで突然声をあげても、つまみ出されるだけだろうと、彼女たちの思い切りの良さと、無謀さにひやひやして見ていたが。案のじょうの結果に。
 
彼女たちは、落ち込んであきらめるのかと思いきや、今度は母校の大学構内で拡声器を持って次なる活動へ。たぶん死ぬまでがんばるんだろうな。
 
この映画を見ていて、だれもが年を取ると個性が際立ってくるということを再発見!顔の輪郭やたるみも、しわの数や現れ方も、声や話し方、歩き方まで、何もかもが個性的、若い時と違って、人それぞれ大きく違う。体調や、不具合が起こった体の部分によっては、腰も曲がるし、背も曲がる。性格もどんどん個性的になる。(それを「頑固」とよぶのかも)そんな個性こそが、「お年寄り」になるということなんだと腑に落ちた。彼女たちと年齢が近い私だから、身に染みてよく解る。
   
いくつになっても考え行動するお年寄り、いいではないか!!
 
世界を変えるのは幾つになっても間に合うんだというメッセージ。歩けなければ車いすがある。耳が聞こえにくくなれば補聴器があると。先日私たちも「安倍政治反対デモ」に“シニア・フェミニスト”の旗を掲げて参加したが、この映画で、まだまだやらなくちゃと元気をもらった一方で、でもあんまり年寄りが張りきりすぎるのもなあと、ちと複雑な心境だ。