1月14日(木)、大阪市立大学文化交流センターで開催された<「女性活躍推進法」を使いたおすために!?>に参加しました。講師は、「真のポジティブ・アクション法の実現をめざすネットワーク」(ポジネット)で女性活躍推進法の成立を後押しされてきた皆川満寿美さん。 私はまったくの勉強不足で法案の名前しか知らない状態、かつ安倍政権の元での法律だし、正規雇用の女性に輝け(もっと働け)っていうような内容でしょ?という思い込みで参加したのですが、そうではありませんでした。参加できてよかったです。
女性活躍推進法(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)は2015年8月28日成立、2016年4月1日施行されます(まもなくですね)。
同法は男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとった法律で、「女性が、職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため」(厚労省)、制定されたものです。
301人以上の労働者を雇用する事業主と国や地方公共団体は、4月1日までに、① 女性の活躍状況の把握・課題分析を行い、② 数値目標を含めた目標や取組内容の行動計画を策定して、公表し、③ 女性の活躍状況に関する情報公表しなければなりません。
女性活躍推進法はポジティブ・アクションに関わる法律であり、重要なのは「ゴール&タイムテーブル方式」、すなわち、目標をたて、期限を設定して、実施するという性格のものだということです。
企業などは、自社の状況を分析して、目標を「数値」を入れて決め、その情報を公開して、おおよそ年1回(以上)進捗状況を公表する。この繰り返しを10年間(時限立法)実施し、ポジティブ・アクションを進めるわけです。
情報公開は企業や厚労省のホームページで行われ、就活中の学生さんや転職の時にはよい目安になるでしょうし、データが公表されることで、「企業は「衆人監視」の下に置かれる」(2015/9/11日経ビジネス 「女性活躍推進法」でアナタの会社はどう変わる?)ともいえます。
皆川さんは、女性活躍推進法の「実効性は、「社会の目」がどれくらい効くかにかかっている」とおっしゃっていました。
「事業主が、この法律の趣旨をどのくらい正しく理解し(単に数合わせ的発想で女性管理職を増やしたりせずに、どうしてそれが必要で、どうやったらそうなるかを十分社内で共有することが肝要)、計画を策定し、実施していくかにかかっている」ものであり、事業主が公表したデータを「社会の目」がチェックすることによって、ポジティブ・アクションが推進されるという仕組みです。
たとえば、当日配布された資料(厚労省・第149回労働政策審議会雇用均等分科会参考資料)の図1では「女性管理職の約4割が未婚者(男性管理職は1割未満)」、図2では子どものいない女性管理職が約6割(男性管理職は約2割」となっています。「現在、管理職層へ到達している世代は、仕事と家庭をめぐる厳しい環境の中、結婚・出産と仕事との「二者択一」を迫られてきたケースが多い」と書かれています。
皆川さんは、この資料を説明し、事業主は「今までと同じこと(雇用管理)をしていたのでは絶対無理!」ということだとまとめ、同法の「基本方針」に「育児・介護等をしながら当たり前にキャリア形成できる仕組み」が必要だとあるように、長時間労働の見直しも求められていることを強調されていました。
ここで、私が気になったのが「非正規はどうデータに反映されるのか?」という点です。
厚労省の資料(Q&Aには以下のように書かれています。
Q 「常時雇用する労働者の数が301人以上」にはパートなどの非正規労働者は入るのですか。
A 「常時雇用する労働者」には雇用契約の形態に関わらず、事実上期間の定めなく雇用されている以下の労働者が該当します。以下に該当する労働者数が301人以上かどうかを確認して下さい。
① 期間の定めなく雇用されている者
② 一定の期間を定めて雇用されている者又は日々雇用される者であって、その雇用期間が反復更新されて事実上①と同等と認められる者。すなわち、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
これは、かなりの非正規雇用者が該当するのではないでしょうか?
それから、こちら↓
Q 女性正社員のみを対象とした取組を行えばよいのでしょうか。
A この法律は、すべての女性の職業生活における活躍推進をはかる内容となっており、女性正社員のみが対象というわけではなく、非正規雇用の女性や、さらには男女を通じた働き方の改革なども含まれています。状況把握の結果、男性を含めた働き方(長時間労働など)や非正規雇用労働者について課題があった場合には、女性正社員のみならず、男性も含めた働き方の改革や、非正規雇用労働者に対する取組を盛り込むことを検討下さい。
男性も含めた「長時間労働」も検討せよ、ということです。
事業主の状況把握の必須項目は①女性採用比率、②勤続年数男女差、③労働時間の状況、④女性管理職比率なので、非正規が入れば①が高く④がかなり低くなるような気がします。
また、この必須4項目に男女の賃金格差が入っていないのは残念なのですが、任意項目には入っています(第二条第二十五号)。男女賃金格差を公開情報として出す企業があれば、それは企業が自信を持っている点だと評価できるのではないかと思います。
事業主が公開した情報をどうやって評価して、「社会の目」を意識させるのか。
皆川さんは、参議院の参考人としても発言していた松浦民恵さんの記事を紹介され(「女性活躍推進法が成立~均等法施行から30年で、次のステージへ」)、女性活躍推進法がうまく機能すれば「均等法から次のステージに一歩踏み込んで、企業の雇用管理にインパクトを及ぼすものになると考えられる」一方、「伝統的な男性向けの雇用管理を見直さず、採用や管理職登用等の数値目標だけを達成しようとすれば、かなりの確立で女性活躍推進は失敗し、禍根を残すという結果になる」という言葉を引用されていました。
具体的に何ができるでしょうか。
イベントでは「自治体に、率先垂範させる!」と説明されていましたが、改めて皆川さんにうかがったところ、「地元自治体の動きをモニターする」という案をあげてくださいました。
すべての自治体は計画を作り実施しなければなりません。自治体は「一般事業主に対する率先垂範の観点からも、取組を着実に進めることには大きな意義」があると説明されています。また、「臨時・非常勤職員を含め、全ての職員を対象としていることを明確にすることが重要。派遣労働者の状況把握も有益」とされています。
まず、どこが担当部署なのか尋ねて、進捗状況を問い、どのように状況把握しているのか(分析のためにどんなリサーチをしているのか、など)聞いてみることができます。
自治体は、民間の4つの必須項目にさらに3つの項目(⑤各役職段階に占める女性職員の割合、⑥男女別の育児休業取得率及び平均取得期間、⑦男性の配偶者出産休暇、育児参加のための休暇取得率・平均取得日数)が加わっているので、自治体間の比較や、民間企業の公開データとの比較も出やすいように思います。
こうした情報はネットで見ることができます。これを活用していくことがポイントではないかと感じました。
会場は満席で、関西の女性運動家がたくさんいらしていました。質疑応答では、私と同じように安倍政権の法律に懐疑的だったという声もあがっていたり、女性活躍推進法をあまり知らないという人も多かったように思います。
皆川さんもおっしゃっていたように、せっかくできた法律、やっと具体的に出てきたポジティブ・アクションです。私たちもポジティブに法案を受け止め、企業などが「社会の目」を気にするよう働きかける必要があるのだと感じました。
女性活躍推進法の関連情報は「特集ページ」に http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html (2月ウェブサイト設置予定)
厚生労働省ポジティブ・アクションのホームページ http://www.positiveaction.jp/