まだ5年なのか、もう5年なのか。東日本大震災から5年がたった。三陸を襲った巨大な津波。それまでに培ってきた日々の暮らしの積み重ねが、根こそぎさらわれ、大切な家族、友人、隣人を失った人たち。どんなに悲しくて辛くても時間は経ち、子どもたちは成長していく。被災地復興に投入される金額の大きさと、住民との意識のずれなど歯噛みするような問題もある。一方で、被災者の一人一人は、時間の経過とともに悲しみの質は変わっても、埋められない喪失感などを抱え持っている。
盛岡市に沿岸から避難して暮らしている人たちをサポートする団体がある。その活動の一つに、復興ぞうきんプロジェクトがあり、故郷を離れて暮らしている主に年配の女性たち(男性も以前は3人、現在は1人)と、月2回、数時間をともにしている。縫い手の被災者さんは、全国から寄せられるタオルや刺しゅう糸で雑巾を縫い、それを買い取って、普通サイズ1本300円、ミニサイズ2本組400円で販売している。
今年に入って製作数、販売数とも10万枚を超えている。たかが雑巾だが、5年経って、色が明るくなり、図案が工夫され、個性が生まれている。名前を見なくても、○○さんのだね、と見当がつくのである。縫い手さんたちは異口同音に、「手仕事があって、それを持って月2回出かけることで、生活に張りが出る」と言う。
縫ったぞうきんを持ち寄り、帯封で巻きながらおしゃべり。
製品になったぞうきんは全国へ。そして海外にも。
沿岸に生まれ育ち、家業で飲食店を営んでいたという80代の女性は、盛岡に来てから、たまには音楽会や映画を見に出かけるという。「年をとって仕事の一線から離れても、家族が働いているのに、自分だけ遊びに行くなんて思ったこともなかった」と暮らしぶりの変化を語る。それをどう思っているのかには触れないが、生き直していることだけは確かである。
“復興”って、なんだろうか。人それぞれで、軽々しく分かち合うとか、わかり合うなどとは言えない。ただ、だれかがいつもそばにいる、と思ってくれるだけでいいのではないか。
復興ぞうきんプロジェクトと、同様の趣旨のグループ活動は、形を変え、ほかにも複数ある。これらは、ブルドーザーの仕事や復興行政などのように、目に見える動きではない。差し詰め、復興活動のニッチである。メインではなくても、まだまだなくてはならない活動だ。 (而)
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