『ユリイカ1月臨時増刊号 総特集 春画/SHUNGA』 上野千鶴子ほか著 青土社(2015年12月)
本書には、永青文庫にて開催された『春画展』を訪れた、春画は見飽きるほど見ていますが、と言う上野さんと、上野さんと同様、さんざん春画を見ていると言う田中優子さんとの対談、『春画の何を見ているのか』が収められている。
『春画展』を訪れる女性たちは堂々としていて、男性たちは解説をじっと見てときどき恥ずかしそうにちらちらと絵を見ていたそうだ。『男はいつも「豆ゑもん」ですから、眼差しの主体であっても客体には決してならない。(中略)女性にとっては、まなざされるというのはある意味でアイデンティティの一部に刷り込まれています。私は『スカートの下の劇場』の中で、「女は自分自身を客体化するナルシシズムのなかに、エロティシズムを感じる」と書きました。男のボディパーツなんかには萌えません(笑)。』(p.154)と上野さん。明白に物語る。
2015年9月から12月まで開催された『春画展』は、盛況で、入場制限がでるほどだったそうだ。カップルが多く、年齢層が広いという印象を受けたというお二人。春画が女性に受け入れられている理由には、女性が経済力を持ちはじめたということと、女性の自己肯定がかなり大きくあるという。
ああ、それにしても、上野さんと田中優子さんの対談に絆されて、春画から広がる、豊かで奥深く、遮るもののない解放された意識と、まどろみかけたときのような夢見心地な感覚を、胸底あたりに覚えているのを呼び覚まされた気がしてならない。あなたの身をもって、女の、客体としての快楽の奥底にいざなわれて浸ってみてはいかがだろう。永青文庫の『春画展』はもう終了してしまっている。ぜひこの『総特集 春画/SHUNGA』で。
■ 堀 紀美子 ■
2016.04.14 Thu
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