意識的に大豆を採る
なぜ「がん」にかかるかについては、食事との関連性が指摘されている。なかでも「乳がん」に関しては、大豆や大豆製品がリスクを低減させる重要な食品であると位置づける専門家は多い。大豆イソフラボンには、エストロゲンの働きを弱めるだけでなく、抗酸化物質としての働きや、「乳がん」が増殖する時に新たな血管を作る作用を阻害する働きがあることもわかってきている。そして研究者の多くは、大豆イソフラボンはサプリメントではなく、食品から摂ることを推奨している。ただし、エストロゲン依存性の「乳がん」治療をしているひとや、かつて治療をしたひとは、大豆食品の摂り方にも注意が必要だとされている(『乳がんからあなたを守る食事とライフスタイル』などを参照)。
日本では、昔から、家庭料理に、豆腐、納豆、味噌などが使われてきた。しかし、近年の食の欧米化によって、その消費量はあきらかに年々少なくなっている。確かに朝はパン食、昼はスパゲティ、夜は西洋料理…といったファミリーレストランの定番のメニューのような食事をしていては、豆類が登場する場面はほとんどない。私も病気になる前までは、典型的な欧米スタイルの食事が中心であった。
日本で昔から受け継がれてきた「一汁三菜」を毎日の基本と考えるようになったのは、「乳がん」の予防効果が期待できる豆類を、しっかりと摂りたいという思いからだ。だが野菜と豆が中心の家庭料理だけでは、どうしても食事が単調になりがちだ。しかも、私は乳製品や卵をほとんど摂らないようにしていることから、ケーキやアイスクリームといったデザートを食べることもない。すると正直なところ、何か物足りない感じがすることがよくあるのだ。そこで、食後により満足感が得られるようにするためには、どう工夫すればいいか、考えてみた。
いろいろな料理本を物色して、いちばん参考になったのは岸本葉子さんの『岸本葉子の暮らしとごはん』だ。
「ゴマ豆腐にメープルシロップをかけたデザート」を見て、さっそく試してみた。すると「チーズケーキのよう…」とまではいかないまでも、深い味わいがある。メープルシロップひとふりで、おかずからデザートに見事に変身してしまうゴマ豆腐の底力を感じた。これはもう、デザート!と呼んでもおかしくない。さらに、ゴマ豆腐を「湯葉」にかえてみたところ、これがまた美味。「湯葉」を食べきった後の豆乳の部分にも甘味が加わり、口中にクリーミィーなコクがひろがる。
ナッツ類は外出のおともにも
空腹を満たすおやつが欲しくなったときは、胚芽や外皮を含んだ全粒粉の小麦粉やライ麦粉に、ナッツやドライフルーツを入れて焼いた、ホットケーキもよく作る。
近年、胚芽や外皮といった穀物の繊維部分には、食物繊維以外にも「乳がん」リスクの低減にとって重要と考えられるビタミンやミネラル、ファイトケミカルなどが豊富に含まれているといわれているからだ(『乳がんからあなたを守る食事とライフスタイル』より)
長時間、外出するときには、カットしたこのホットケーキをラップに包み、バックに忍ばせている。アーモンドやクルミなども小さな容器に入れて持ち歩き、カフェに入る前に、ちょっと口に入れて、空腹感をなくしてから、香り高いコーヒーを楽しむことも多い。アーモンドやクルミなどのナッツ類は、ビタミンEを多く含んだ健康食材だ。特にアーモンドはピーナッツと比べた場合、三倍ものビタミンEを含み、カルシウム、鉄、リン、カリウム、マグネシウムなどのミネラルも含まれている。ミネラルは代謝、生理作用にも影響を与える大切な成分で、健康維持には欠かせないものだ。
私は「乳がん」になってから、体質を変えるため、食事内容を検討しているとき、ナッツ類が栄養豊かな食品であることをはじめて知った。それまでは、飛行機のなかで、アルコール類とともに出される「おつまみ」としてしか食べてこなかった。「ナッツ=健康食」といった印象はなく、ニキビや吹き出物の原因になるだけ、というようなマイナスのイメージしかもっていなかったからだ。
最近では、自宅で紅茶や日本茶を飲むときにも、少量のナッツ類を食べる機会が増え、アーモンドやカシューナッツ、ピーナッツといろいろな種類のものを揃えている。栄養学や食品学について、独学で勉強してみてはじめて、自分自身と家族の健康を守り、子どもを丈夫に育てるために欠かせない知識がいかに足りなかったのかがわかった。
私は知らず知らずのうちに、母(30年もフルタイムで働き続けたが、年金を受給することもなく、胃がんであっけなく世を去った)と同じように、働いて稼ぐことが最優先の生活を続けてきた。考えれば、私と母の食事内容には共通点が多かった。母は私のようにアルコールは飲まなかったが、朝はトースト1枚とコーヒー、昼は職場で注文しているお弁当、夜は仕事かえりに「できあい」の惣菜や加工品ですませてしまう日々。甘いものが大好きで、毎日欠かしたことがない。特にケーキは大好物で、牛乳もいつも冷蔵庫に買い置きし欠かしたことがなかった。食事内容はあきらかに野菜が少なく、ミネラル不足で、睡眠時間も毎日4時間程度しかなく、こうした会社勤め中心の生活を30年も続けていた。母はいつもちょっとしたことで怒り出し、すぐに感情を爆発させていたが、こうした食生活が影響していたと思えてならない。感情の起伏が激しく、あらゆることに神経質な性格も…。
母を看病した経験と、自分自身の「乳がん」を通して、これから何を食べ、どう生きていくのか、私は人生を見つめなおす機会を与えてもらった気がする。

書の作品を随時アップしているFacebook のページより Setsuko Nakamura "Sho no michi"
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
フェミニストカウンセリング
弁護士
女性センター
セレクトニュース
マスコミが騒がないニュース
女の本屋
ブックトーク
シネマラウンジ
ミニコミ図書館
エッセイ
WAN基金
お助け情報
WANマーケット
女と政治をつなぐ
Worldwide WAN
わいわいWAN
女性学講座
上野研究室
原発ゼロの道
動画






