2009.09.20 Sun
「紫式部と清少納言、どっちが好き?」
子供の頃、学校の授業で彼女らが登場するたびに、先生は必ずこう聞いた。そしてクラスメイトたちは必ずこう答えたものだ。「紫式部が好き!だって清少納言は男に勝った自慢ばかりして生意気だもの」
正直、ずっとこの問答に違和感があった。だいたい紫式部だって、自分の日記に同僚の悪口だとか、道長様に褒められた自慢話だとかを書きまくって、ある意味清少納言よりずっとインケンじゃないか。しかも清少納言の勝気話は必ず強調されるのに、どうして紫式部のインケン話は誰も紹介しないのだ。要するに「男に勝つ」って部分が気に入らないだけなんじゃないのか、みんな。
高校時代に出会ったこの本は、こうした私のモヤモヤをすべて吹き飛ばしてくれる、爽快きわまりない小説だった。強く潔く朗らかで明るい、一人の女性として実に魅力的な清少納言像を、田辺氏はもちろん意図的に描き出している。それは「男に勝った自慢ばかりする嫌味な女」という既存の(偏った)清少納言像を、根底から覆すものだった。
そしてなぜ清少納言が『枕草子』の中にあのように明るい、楽しい、ポジティブな話ばかりを書き残したのか――物語はその謎をも明らかにしていく。笑い続けること、楽しみ続けることは、清少納言にとってただひとつの抵抗の手段であり、強さだったのだ。
*上巻と下巻の全2冊。
(tsering)
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