呼吸を意識すれば…

 人間は、数日間、何も食べなくても生きていられるが、息をしなければ、生きてはいけない。
しかし、私たちはついつい、いつの間にか日常の雑事に追われ、「生きる」とは「息をする」ことであるのを忘れてしまっている。
深い呼吸がいかに大切であるかは、前に書いた通りだ。意識をして呼吸するようになると、深く空気を吸ったときに肺が膨むのがよくわかるようになる。するとその下には胃があり、そばには肝臓があり…と自分の内臓をイメージできるようになってくるのだ。背中、腰、胸、腹部と、全身の筋肉を意識することで、肺や肝臓、胃、腎臓の機能も高まるらしい。 それらは単なるからだの一部としての臓器ではなく、私とともに生きてくれている、それぞれが独立しているように思えてくるから不思議だ。すると、私の所有物というより、私にとっての協力者(=モノ)といった感覚に近くなる。
 以前、夜眠る前に、自分の内臓のひとつひとつに「ありがとう」をいってから眠る、というひとの話を聴いたことがあった。感銘を受けた私は、何度か自分でもやってみたが、どうしても、気が散ってしまい、途中で止めてしまっていた。ところが、深い呼吸とともに行えば、呼吸そのものに集中できるせいか、すんなりとできることに気がついた。
 さらに寒い日以外に、私が実践しているのは、朝、シャワーを浴びる前に、からだをブラッシングすることだ。これはヨガの師、Rさんに教えてもらった方法だが、まず足の指先から上へ上へと、つまり心臓に向かってブラッシングする。 使うボディブラシは動物の毛で作られたもので、ゴシゴシとからだを磨くのではなく、やさしくブラッシングする。そうすることで、毛細血管にほどよい刺激を与えられる。その結果、からだの隅々にある細い血管まで血液が十分に流れ、とても気持ちがいい。
 私は乳房の周囲や脇のリンパ節も、やさしくブラッシングしているが、半年ほど続けてみると、これまであったゴワゴワとした感じ=自分でも何かの「しこり」なのか、それとも乳腺症によって硬くなっているのかがよくわからなかったモノが極端に少なくなった。 だからといって、私の乳房に若い頃からある、石灰化したモノが減ったということはないが(レントゲンで見るとわかるので)、乳房のものが柔らかくなったのは確かである。 なぜこれまで、からだを撫でたり、マッサージするといった、こんなに単純なことを思いつかなかったのだろうと思う。 からだの手入れ法は、自分ではなかなか気づきにくいうえに、すぐ効果がでるわけでもない。しかし、習慣化できるまで続けてみることで、やっとその効果がわかってくる。

体調管理は子育てと似ている

 私は自分が子どもを持ち、そして大病を経験してから、わかったことがある。それはおとなが子どもに教えるべきことで、最も重要なことは、食生活の知恵であり、その次にくるのが、からだのいたわり方や日頃のメンテナンスの仕方を伝えるということだ。
「自分のからだは、そう簡単に壊れない」と思っているのは本人だけで、私がそうだったように、からだは気づかない間に悲鳴をあげていることもある。 優れたサッカー選手の質のよい筋肉は、手で触ると赤ちゃんの肌のようにやわらかいといわれている。人間のからだにとって、「硬い」ことは何のいいこともなく、「やわらかい」状態が理想なのだ。
 それは精神面でもいえることで、心を閉ざし、全身が固くなっているときは、孤立しやすく、落ち込みやすい。やわらかい心でいられるときは、ひととの関係性がうまくいっているときである。だが、すぐに心をやわらかくしようとしても、そう簡単ではない。そんなとき、私は自分でからだを優しく撫でることにしている。
 子育てにおいても、母親が赤ちゃんとスキンシップすることで、赤ちゃんの精神は安定し、リラックス効果があるセロトニンが増えることは、科学的にも証明されている。
以前、私は「リンパマッサージ」の施術を受けたことがあった。施術者の撫で方は、物足りないくらいソフトで、リンパに効いているのか効いていないのか、正直なところ、よくわからなかった。
 こんな優しい刺激でも、リンパの流れが良くなるというのが、不思議に思えたくらいだった。
私が継続してリンパマッサージに足繁く通えれば、さらに効果が出たのかもしれないが、60分の施術で約7,000円の支払いを続けていくのは、収入が少ない私にはとても無理だ。 そんな事情もあったが、タワシを使ったマッサージ法を覚えてから、からだのだるさや、どうしようもないような体調の悪さから、「リンパマッサージ」や整体院に駆け込むことがなくなった。
 ヨガによって、以前よりはるかに、からだが柔軟になってきたせいもあるが、ブラッシングをしたり、日常生活のなかであまり動かさない部分を意識的に撫でたりしていることが、じわじわと良い効果を生み出していると感じている。
これから丈夫に生きていくために、自分でできることはできるだけやり、生活習慣にしていきたいと思う。

Facebook のページより~Setsuko Nakamura "Sho no michi"