
高橋ふみ(1901―1945)は、ようやく女性にも最高学府(帝国大学)への門戸が開かれつつあった大正期に、東京女子大学哲学科の第1回卒業生となり、東北帝国大学で哲学を専攻し、石川県で最初の女性学士になりました。ふみの帝大進学以降、「おふみさんに続け!」は東京女子大学から帝国大学に進学しようとする女子学生たちの合い言葉になりました。さらに女性哲学研究者としてのキャリアを求めて、35歳でドイツに渡り、ベルリン大学、フライブルク大学で哲学を学びました。日本女性として初めて学術雑誌に哲学論文を書き、日本人で初めて伯父西田幾多郎の論文をドイツ語翻訳するなど、哲学研究者としてのキャリアを積んでいきましたが、病と戦禍のために道なかば、43歳で早世した未完の女性哲学者です。
女性に学問は不要と言われた時代に、真の女子高等教育とは何かを問い、提言し続けた「おふみさん」。女性哲学者のフロンティアとして、女のくせに、男のようにと揶揄されながらも、自分の道をひたすらに追求し続けた「おふみさん」、茨の道を切り開こうと果敢に挑戦し続けた一人の女性哲学者の生涯とその思想を辿ります。
知識は女性の将来の天性をそこなうものではなく、かえって豊かにし、深くするものであることは例をあぐるにいとまがないほどであります。欠くる所なき女性は知識的に磨かれることによって、一層その輝きを加えるということができましょう。(ラジオ講演「女子教育における知識の問題について」1936年1月6日)
次代における女性が女性としての人間性を高揚せしめよき社会人としての人間性を高揚せしめよき社会人として文化に貢献し得るには、かかる意味における仕事を戦い取ってゆくより他にはないと思う。
(「女子高等教育の問題シンポジウム」、『岩波講座教育科学第十八冊』1933年所収)
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