撮影:鈴木智哉

ケース1
 フランス人の夫と離婚することになりました。調停で離婚は可能ですか。

 ケース2
私と夫は中国人同士で、日本に住んでいます。日本の市役所に協議離婚の届出をしました。届出は有効でしょうか。

 ケース3
私と妻は韓国人同士で未成年の子どもがいます。日本の市役所に協議離婚の届け出をすれば離婚できますか。

 ◎調停か審判か判決か
日本では協議離婚が認められていますが、各国によって離婚の方式は様々です。裁判離婚しか認めない国もあれば、行政機関により離婚が認められる国もあります。準拠法によれば裁判離婚しか認められない場合に、日本での調停離婚や審判離婚が認められるかどうか問題となりえます。調停離婚でも、裁判所も関わっていることから、調停調書中に「確定判決と同一の効力を有する」と記載してもらって認められることがあります。が、認められない場合もあり、本国でどうなのか、よく調べる必要があります。曖昧なら、審判離婚にしてもらうとよいでしょう。裁判所に当該国の離婚の方式を説明すれば審判離婚にしてもらえるでしょう。
ケース1に関しては、フランス民法では調停離婚制度もありませんが、裁判官による離婚の言渡し等を要件とする相互の同意による離婚が認められています。そこで、東京家審昭和57年12月10日家月36巻7号94頁は、家事審判法24条(家事事件手続法284条)により審判離婚を認めました。

 ◎中国人同士の協議離婚
中華人民共和国の婚姻法では、「登記機関に出頭し離婚登記を申請する」ことが離婚の要件です。
この登記申請がない協議離婚は有効でしょうか。
登記申請は方式の問題にすぎないとして、有効とする例があります(高松高判平成5年10月18日判タ834号215頁、大阪家判平成21年6月4日戸時645頁31頁)。
なお、有効とした大阪家判平成21年6月4日戸時645号31頁は、「中国方式の協議離婚の場合、子の扶養者、養育費の負担、財産関係が協議により適切に処理されていることが求められているので、日本の役所が日本の方式で協議離婚を受理する際も、中国法によって扶養者、財産関係の協議事項の確認をするのが望ましい」としています。

 ◎韓国人同士の協議離婚
かつては、韓国人同士の離婚でも、日本の協議離婚の方法で足りるとされていました(昭和53年12月15日民2-678依命通知)。
1977年の韓国の民法改正により、協議離婚の場合、家庭法院で離婚の合意があることの確認を受けなければならなくなりました。この点、単なる方式に関するものとして、日本での協議離婚届出は韓国でも有効とされていました。しかし、2004年9月以降、韓国では離婚の合意の確認を方式ではなく実質の問題として扱うようになり、韓国の領事館における意思確認を要することになりました。
さらに、2007年民法改正(2008年6月施行)により、養育すべき子がある夫婦が協議離婚しようとする場合には、家庭法院による「離婚に関する案内」を受けなければならず、同案内を受けてから3ヶ月以内に養育者の決定、養育費の負担、面会交流の可否及び方法について協議し、その協議書を家庭法院に提出して初めて離婚合意の確認を受けることができることになりました。そこで日本に住む韓国人同士の離婚の場合でも、駐日韓国公館長による意思確認、公館長への養育と親権者決定に関する協議書の提出が必要となっています。