6月3日(土)第1回「WAN須藤研究室」、「それぞれの女性学構築に向けて~私たちが作る新しい女性学テキスト」を静岡県浜松市のあいホールにて開催しました。参加者は45人(うち、WAN会員9名)で浜松の方はもちろん、西は大阪、東は静岡市と幅広いエリアからお越しいただきました。
動画での公開も予定していますが、まずは速報としてご報告いたします。

■WAN須藤研究室 第1回レポート■


テーマ:「それぞれの女性学構築に向けて~私たちが作る新しい女性学テキスト」
日時:6月3日(土)13:30~16:00
会場:あいホール(浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター)
講師:須藤八千代 (愛知県立大学名誉教授)
ゲスト講師:林寛子 (中日新聞社 取締役 東海本社代表)
渋谷典子(NPO法人参画プラネット代表理事/認定NPO法人ウイメンズアクションネットワーク(WAN)副理事長)
共催:NPO法人浜松男女共同参画推進協会


第1部:「それぞれの女性学構築に向けて」
 「ゼミナールは、私にとって、(軽い)錯乱の対象であって・・・・この対象に惚れこんでいる ロラン・バルト」。これは「折々のことば」(朝日新聞)である。講演の冒頭に紹介した。そこで鷲田清一は、「ゼミナールは種が蒔かれる場所、教師も学生もなくそれぞれに弾ける場所なのだ。そこでは確定した何かが伝授されるのではなく、解らしきものはみな宙吊りにされる。足場を崩され、めまいに襲われる」と書いている。
 WANの「須藤研究室」の第一回にふさわしい刺激的な言葉である。今求められている知の新たな場所を、私はこのようにイメージする。当日も参加し発言してくれた杉本貴代栄さん(元金城学院大学教授)が、女性学の講義で使っている『女性学入門―ジェンダーで社会と人生を考える』(杉本貴代栄編著)の改訂版を考えているとつぶやいたとき、私は今回のテーマを思いついた。
 女性学がアカデミズムの中で一定の位置を獲得したと言われてから、かなりの時間がたっている。しかし女性学が学問の見直しと社会の変革という課題にどれだけ貢献したのか検証する時期に来ているのではないか。今こそ女性学の「改訂版」が編まれなければならない。そういう気持ちを強く持った。それは私が年を重ね、また都会から菊川市という地域に移り住んだことにも関係する。
 時代や場所が変われば社会のあり様も変わる。改めて女性学のテキストを開いてみると、かつてアメリカで女性学が「白人で中産階級の女性を対象としている」と批判されたと同じように、日本の女性学もいわゆる「良家の子女」と言われてきた「普通の女性」を対象にジェンダー、仕事、性、結婚、母性、などを論じてきたのである。
 その女性学の狭隘さが、女性学の研究や実践の力を弱めているというのが私の発題である。グローバルにそして時間軸や場を柔軟に動かし、まさに「足場を崩され、めまいに襲われる」ような経験なしに、女性学の改訂版は生まれない。ただ短い時間のなかで、そのような私の意図が十分伝わったかは確かではない。

 第2部はゲスト講師林寛子、渋谷典子の3人で2009年の座談会「愛知が変われば日本が動く、の意気込み」『地域から変える女性たちが変えるー男女共同参画社会をめざして』(財団法人市川房枝記念会)を再現した。すなわち「浜松が変われば日本が動く、の意気込み」というテーマである。
 その時愛知にいた3人のうち林、須藤が静岡に移り住み、元名古屋男女平等参画センターの渋谷の提案で、浜松男女共同参画センターにおいて「それぞれの女性学の再構築に向けて」が語られることになった。こうして語り合う場所は愛知から静岡に変わった。
 愛知と静岡は隣接しているが、女性が生きる場所や文化など地域性は無視できない。そこには女性学のテキストが漏らしている多様な女性と現実がある。
 後半は会場にマイクを向けた。期待どうり参加者から次々と発言があった。その一人一人がそれぞれの女性学のテーマを持っていた。またゲスト講師の二人は自分の経験をもとに前向きな言葉で発言者を励ました。「そういう交感が何にも代え難い悦びとなる」という鷲田清一の言葉そのままが再現された。
 参加してくれた方々が、軽いめまいを感じながら帰路に就いたとしたら嬉しい。2回目の「WAN須藤研究室」の準備に走り出している松尾千尋さん、近藤佳美さんの開催までのご尽力に改めてお礼申し上げたい。

須藤八千代


◆次回は、9/24(日)午後1時30分から、愛知県立大学サテライトキャンパス(ウインクあいち15階、名古屋駅から徒歩5分)にて、立命館大学非常勤講師の茶園敏美さん(比較ジェンダー論)をお招きして「もうひとつの占領-セックスというコンタクト・ゾーン」をテーマに第2回「WAN須藤研究室」を開催します。 次回、名古屋でたくさんの方とお会いできることを楽しみにしています。 スタッフ 松尾千尋・近藤佳美




※写真提供(第2部座談会の様子)_NPO法人浜松男女共同参画推進協会