
「女性活躍」の旗のもと、「育児と仕事の両立ができている」女性がロールモデルとして掲げられる時代がやってきました。しかし現実には、早朝から夜遅くまで家事に育児に、さらに仕事にと女性たちは一日中働きづめ。自分の髪の毛はパサパサ、爪はネイルケアどころかささくれも放置。職場では早退や急な欠勤を繰り返しペコペコ頭を下げ続け、休日に子連れで街に出ればベビーカーがじゃまだと舌打ちされます。帰宅した後は、「お腹すいたー」「ゲーしたー」と次々突き付けられる子供の要求に休む間もなく対応。家では誰かのためにタダの仕事、職場では男性よりも低い賃金の仕事という二重の労働を担って、毎日「ワンオペ」で十数時間働き続けています。まるでブラックな労働です。疲れ切った心身が叫び声をあげます。「私、もうヘトヘトなんですけど! 」
本書は、現在幼い子供の世話をしながら働く女性とその周囲の人たちを筆者が観察し、話を聞いてまとめました。首都圏に在住する30~40代の親たちが中心です。この母親たち問題の今日的状況をわかりやすく伝えたいと思い、研究書としてではなく、幅広い読者を想定して書きました。内容は、第1章 産みにくい社会、第2章 自称イクメン問題、第3章 孤独なワンオペ育児、第4章 「保育園落ちた!!!」、第5章 職場と上司の厚い壁、第6章 若者の理想と現実、第7章 ワンオペ育児を乗り切る方法という構成です。
少子化問題について頻繁に議論がなされる一方で、産んだ女性たちにどのような重い負担が強いられているのかに関しては十分に議論がなされてきませんでした。マスメディアで働く人の大半は男性であるため、子育てと仕事の両立に関する切実な問題もメディアの脇に追いやられがちです。
この「ワンオペ育児」という言葉がインターネット上で広まり始めたことから、父親が長時間労働が不在のなか、母親が1人で育児をしている状況が当事者たちの間で「問題化」され始めています。本書が女性たちのアクションを促す一助となれば幸いです。
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