2017年11月1日
文部科学大臣 林 芳正 様
文部科学省
官房長 藤原 誠 様
生涯学習政策局長 常盤 豊 様
男女共同参画学習課長 中野理美 様
文部科学省の組織改編に伴う男女共同参画学習推進の強化に向け総合教育政策局に「男女共同参画学習課」を存続させることを求める要望書
青木 玲子(認定NPO法人男女共同参画こしがやともろう理事)
入江 直子(神奈川大学名誉教授、日本社会教育学会名誉会員)
亀田 温子(十文字学園女子大学名誉教授、日本社会教育学会前常任理事)
城倉 純子(国際婦人年連絡会 教育・マスメディア委員会委員、
[一社]大学女性協会女性エンパワーメント委員会委員長)
髙井 正(立教大学学校・社会教育講座特任准教授、
日本社会教育学会前常任理事)
牧島悠美子(国際婦人年連絡会事務局長、[一社]大学女性協会副会長)
村田 晶子(早稲田大学文学学術院教授、日本社会教育学会常任理事)
村松 泰子([公財]日本女性学習財団理事長、前東京学芸大学長)
男女共同参画社会の実現は今世紀の最重要課題の一つとして男女共同参画社会基本法に位置づけられていますが、世界のなかでも日本の遅れた状況はあきらかです。少しずつ前進はしていますが、そのスピードがあまりに遅すぎます。男女共同参画社会の実現に教育の果たす力がきわめて大きいことを考え、今回の文部科学省の改編にあたって、男女共同参画学習推進の機能強化に向けて以下を要望します。
男女共同参画社会づくり、およびそのための学習にかかわる者として、男女共同参画が教育行政のあらゆる面に横断的にかかわることを踏まえ、今回の改編にあたって、「男女共同参画学習課」を存続させることを強く要望します。この改編が、男女共同参画学習推進の機能強化に向けて、これまで課題であった学校教育と社会教育の連携がより強まり、「男女共同参画社会の実現」にむけた有効な働きかけを可能にするのかどうか注視しています。
記
1. 文部科学省、総合教育政策局における「男女共同参画」の位置づけを、共生社会のワン・ピースではなく、全ててにかかわる横断的事柄としてとらえるよう要望します。
男女共同参画は共生社会にかかわることがら(障がい、国籍、宗教、性指向や性アイデンティティなど)の1つの部分ではなく、それらを貫くすべてに関わる事といえます。その位置づけを明確にしておかないと「共生社会」の言葉の出現により、男女共同参画の問題は部分的な扱いとされたり、社会の課題として見えにくいものとなりかねません。具体的には、障がいの問題にジエンダーの問題が含まれ、宗教の問題にジエンダーが含まれ、また今日の働き方改革、ワークライフバランスの推進、子育て支援など、どれをとっても男女共同参画とのつながりがあります。総合教育政策局の柱の一つとして、男女共同参画を横断的事柄として位置付けることにより、文科省の筆頭局として、男女共同参画社会づくりに向けて充分な機能を果たせると言えます。
これを前提に、男女共同参画に関わる機能強化に向け、具体的には次以下の2〜5の諸点を要望します。
2.男女共同参画について、学校教育と社会教育の連携をより深め、有効な事業展開につなげる機能をはたすことを要望します。
人々の人権尊重を基盤にした男女平等観の形成を図り、男女共同参画についての 理解の深化を促進するためには、とりわけ初等中等教育において男女平等を推進する教育・学習の充実を図ることが望まれます。
現在の生涯学習政策局は文科省の筆頭局です。そこに位置する男女共同参画学習課は当然のこととして義務教育を所管する初中局へ、さまざまな働きかけをなさってこられたことと推察します。しかしながら、初中局はそうした働きかけをどのように受け止め、施策に活かしてきたのでしょうか。
総合教育政策局には学校教員の養成・研修を所管する教育人材政策課が設置されることになっています。男女共同参画学習の担当課は、教育人材政策課との連携を密にし、初等中等教育での男女共同参画学習の充実のために初中局への積極的な働きかけを行うことが不可欠だと考えます。高等教育においても女性研究者支援に加え、教育・研究のあらゆる面での男女共同参画の視点が必要であり、男女共同参画学習の担当部課による働きかけが求められます。筆頭局としての機能の発揮に期待します。
社会教育における男女共同参画学習の充実には、国立女性教育会館の研究機能と研修機能のさらなる強化を進め、地方自治体における取り組みの推進への支援が望まれます。また、社会教育主事等の養成・研修を所管する教育人材政策課との連携を図ることが不可欠です。
3. 課をまたがる事業テーマについては、組織間の連携による有効な働きかけを行うことを要望します。
社会問題の解決には、1つの課の担当だけでなく課をまたぐ連携がますます重要になっています。近年、人生100年時代にむけて男女共同参画学習のテーマとして女性の生涯設計、キャリア・ライフデザインがあげられます。こうしたテーマは、生涯学習推進課の学び直し推進担当、職業教育担当と男女共同参画学習の担当課との連携が、さらに大学教育の担当課などとの連携がきわめて重要になります。またNGO/NPOほか民間組織との連携も望まれます。また一方、男女共同参画社会づくりに向けて大きなテーマである家庭教育にかかわり、家庭教育支援室との連携はきわめて重要であり、家庭教育支援に男女共同参画の視点を導入することが望まれます。こうした組織間の有効な連携により、社会課題の解決にむけた学習環境整備の実現につなげることを要望します。
4. 総合教育政策局に「男女共同参画学習課」を存続させることを要望します。
また、社会教育振興官と並び「男女共同参画振興官」を設置するよう求めます。
要望1、2、3で述べたとおり、男女共同参画が文部科学省、その筆頭局である総合教育政策局の所掌範囲に横断的な事柄であることに鑑み、省内・局内の男女共同参画施策の推進を束ねる課として、「男女共同参画学習課」を存続させることを強く求めます。課名に「男女共同参画」を冠したものがなくなることは、都道府県・市町村の関連事業、予算の縮小にもつながりかねません。文科省としての男女共同参画にかかわる取り組みの強化を顕在化させることが必要です。
また、省内・局内の男女共同参画施策の推進にあたる「男女共同参画振興官」を、社会教育振興官とともに置くことを要望します。それにより、学校教育、社会教育、企業社会での男女共同参画をつくる学習推進に向けた課題解決の推進をはかり、対外的には男女共同参画社会づくりに向けた文科省の取り組みを顕在化して示すものとなります。
5. 都道府県・市町村男女共同参画行政担当者、女性センター担当者、NGO/NPOなど民間関係者に対し、会議の開催、説明資料の作成等を通して、今回の改編の趣旨や、男女共同参画の推進にかかわる方針についての説明することを要望します。
私たちは、この度の改編について日本社会教育学会等を通して知るに至りました。しかし、多くの関係者はほとんど知らない状況におかれています。基礎自治体で男女共同参画社会基本法にもとづいてその任に当たる職員、NGO/NPO団体の関係者すら「何も知らされていない」「驚く以外に何もない」という反応を見せています。これまでそれぞれの立場で努力してきたことを無視しては今後の施策の推進もかないません。
今後開催される行政・民間のさまざまな関連会議において、今回の改編の趣旨を明確にし、今後の男女共同参画社会実現のための工程を明らかにすることとを求めます。
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