こどもキッチン、はじまります。: 2歳からのとっておき台所しごと

著者:石井 由紀子

太郎次郎社エディタス( 2017-09-13 )


 今やボタン一つで家事が済まされるようになり、路地裏でのこどもたちだけのコミュニティは消え失せ、家でも外でも、常に大人の管理下にあるこどもたち。自由に、自然の中で、環境を自ら使って、こどもたちだけの手でやる活動は年を追うごとに限りなく減らされ続けています。早期からペーパー学習に向かわされたこどもたち。スマホやテレビに接する時間が長いこどもたち。その環境は【身体能力】に大きな異変をもたらしています。事務用のホチキスの芯を入れることができない医学部生。刃に触れるとどうなるかの想像ができず、洗い物での「包丁」で流血する短大生、など枚挙にいとまがありません。

 小さいこどもたちは、台所にやってきては「何かをやらせてくれ」とせがみます。それは、「自分の思ったとおりに体を動かせるようになりたい」という本能的な欲求が湧いているから。家の中で台所ほど、こどもたちが獲得すべき手や体の動きが満載な場所はないのです。できないからこそやれるようになりたくて、子どもたちは台所にやってきます。

 喜んで自立への道を自ら歩む彼らは、大人に言われなくても「今これをやるぞ! と自分で決めて自分の意志でやろうとします。【自己決定能力】は、幼少期のこどもたちにしっかりと存在しています。

 幼少期のこどもたちが料理をする親子料理教室を通して出会った8000人を超えるこどもたちの様子から、こどもが自立するための必要な要素はこどもの中に内在していることを実感しています。そこにあるものをただ伸ばすだけなのですね。

 本書では、親子で楽しむ台所仕事から、こどもの自立を促すヒントを随所に散りばめました。包丁を使わないレシピは、こどもの台所仕事をスタートする第一歩にぴったり。レシピごとに、大人が準備するのは何か、こどもがやるのは何か、を丁寧に示しました。しかも「こどもだからこんなもんでしょ」ではない、大人もぜひ作りたいしリピートしたくなる美味しくて作り甲斐のあるレシピが18種類。また台所仕事には不可欠な火や刃物などを子どもが安全に扱うための心得も盛り込んでいます。