『わたしを生きる知恵 ―80歳のフェミニストカウンセラーからあなたへ―』
著者:河野貴代美  対談:岡野八代  2018年、三一書房刊

 この本は、著者河野貴代美さんの書下ろしと、岡野八代さん(政治思想史、ジェンダー研究の専門家)との対談が交互に収められています。WANでは「こころの相談」の回答者として登場していただいているので、WANのメンバーは、河野さんをよくご存じだと思います。

 河野さんは、40年ほど前にアメリカで出会った「フェミニストカウンセリング」を、初めて日本に紹介した方です。この本では、河野さんの自分史が実に率直に語られています。子どものころ、思春期のころ、そしてフェミニズムに出会って、自己受容の感覚を得たことの感動。ずっと抱えていた「違和感」の正体に気づいたときのこと。アメリカへ渡り、NOWに参加することで発見した様々なこと等々、読んでいるだけでもワクワクします。

 日本の各地でカウンセリングルーム立ち上げに力を注いでいたころや、その後の活動についても書かれています。彼女のお話を聞いたことのある方は、そのお話を聞くだけで、自分の意識がかなり変わることを経験なさったと思いますが、この本ではフェミニストカウンセリングやCRの理念や方法なども、解りやすく述べられています。

 また、専門領域の違う岡野八代さんと河野さんの対談が収録されていて、興味深いお話が伺えます。このお二人はどこで接点がおありだったのかと思いますが、ここでは岡野さんが、生い立ちや、母子関係、自身のセクシュアリテイのことなども、とても自然に話されていて、お二人の場の空気まで感じられるようでした。

 「家族」に代わる支え合いの形や、「自己責任」、「個の尊重」など、今も論議は尽きない問題にも、丁寧なお話で解りやすく述べられています。注釈が入っているのも親切です。カウンセラーによるコラムが挿入されていて実際に携わる方の声も。

 この本はフェミニストカウンセリングの理念だけでなく、その歴史についても最高の案内書となっています。お薦めの1冊です。