レポート#1 ★ 2018年1月13日・名古屋西文化小劇場

女性作曲家を特集したプログラムは珍しく、WANならではの視点だな、と思い鑑賞しました。

奏者の石本さんが書かれているエッセイもコンサート中のご本人のトークで知りました。
音楽を幼少の頃から身近に感じたり、たしなみとして学ぶ女性はいたのだけれど、たしなみ以上に才能を伸ばしたり、職業にしたり、結婚後も継続したり、正当な評価を受けたりすることは女性であったが為に叶わなかったことがあったのだと知りました。


2018年1月13日・名古屋西文化小劇場

しかし、環境の変化に乗じて再開したり、周りに抗い意思を貫き通したりして名を遺した女性作曲家たちの活躍があったのも事実。
石本さんの「お話」が楽しくて、作曲者たちの生活背景を感じながら聴く体験は初めてでしたので新鮮な観賞会でした。

2018年1月13日・名古屋西文化小劇場

2018年1月13日・名古屋西文化小劇場

演奏曲の感想としては、「ヴィンテムの泉」が「おぉ~!」ときました。
「夜のツグミ」はうっとりしました。
「春のプレリュード13-1」は「春早く来て頼むから祈るから」のように感じましたけど、本当は春が来て嬉しいだったのかしら、思いを巡らしながら気押され聴き入りました。
「乙女の祈り」40年前に通った小学校の給食の音楽だったので、4時間目が終わって給食の準備をしていた時を、いつ聞いても思い出し、騒がしい気分がします。
邦題を知って食事と関係の無い曲だったと知ったときは、それはもう衝撃を受けました。

■ 上野 奈苗 ■



レポート#2 ★ 2018年1月14日・四日市市地域総合会館あさけプラザホール

1月14日、三重県四日市市地域総合会館あさけプラザホールで開催されたピアニスト石本裕子さんによる「陽の当たらなかった女性作曲家たち」のコンサートに参加させていただきました。

私は、この日まで、石本さんに出会うまで、世界中に存在したすぐれた女性作曲家を知らなかった。そして、建前上でも男女平等と謳われる社会に生き、音楽も自由に聴け、自由に表現し、美術館や博物館にも行きたいときに行くことができている。しかし、石本さんにより、女性作曲家たちの生涯を紹介しながらその作品をみずから演奏していただけたことで、男女平等社会の根本的な盲点はここにあったか!!ということに気づきました。

2018年1月14日・四日市市地域総合会館あさけプラザホール


学校という教育現場では、“男女平等”。そう認識されているようで、そうではないのは、ピカソの名言である「子どもは誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかである」を彷彿させるものではないだろうか。

学校現場では、90年代以降出席番号、ランドセルの色、体操服の色、家庭・技術の授業等男女同一になり、子どもたちは学校では男女は平等だと思い込んで社会へ出ると、男女不平等の壁にぶち当たる。男女平等における学校でさえ、音楽の授業で学ぶ作曲家は現在でも、決まってベートーベン・バッハ・モーツアルトといった男性作曲家ばかりであり、それになんの違和感もなく成長をしていく。知らず知らずに、男性優勢を身に付けていくからではないだろうか。

しかし、今回のコンサートでは、会場に足を運んだ方たちは、ほとんど「共感世代」であるように思われた。今後、共感のみに終わらず、石本さんの研究が、これからの世の中を担う子どもたちに浸透し、音楽の幅を広めていって欲しい。そうすれば、必ず、真の男女平等社会が実現する。そう強く思いました。

京都造形芸術大学によると、芸術とは、人文科学、社会科学、自然科学など、あらゆる分野や社会問題に直結する、何より総合的で実用的な学問とされている。芸術を学んで、問題解決能力を持つ人々が、ひとりでも多く世の中に増えること。それこそが、これからの社会をより良く変える大きなエネルギーになるという。



石本さんのお人柄は、本当に穏やかで、この殺伐とした現代社会に生きる人をも一時でも、穏やかさを取り戻せる時間になると思いました。

もちろん演奏の素晴らしさ、音色の美しさ、それが石本さんの人柄によりさらに美しいものとなって奏でられ、石本さんにより陽を当てられた女性作曲家たちが、石本さんの横にいるような気さえしました。 音楽、そして芸術とは、精神的自由と深く関わる、そう思える貴重なコンサートをありがとうございました。

■ 三重大学 石田尚子 ■

石本さんのエッセイは、こちら↓↓↓
エッセイ「陽の当たらなかった女性作曲家たち」