前回は学校給食の雰囲気をさっくり、そして給食費の問題について書きました。
今回は給食の献立牛乳について書きたいと思います。

「私、栄養士です。」と自己紹介をすると、
「献立考えるなんてすごいですね!難しくないですか?」と言われることが多いです。
栄養士と名乗る以上は、献立は考えられて当たり前。
だから、そこはすごくはないと思うのですが、
難しくないかと言われれば、私としてはどちらとも言いきれません。

学校給食には文部科学省から出されている学校給食摂取基準食品構成というものがあり、それに沿って献立を考えています。 摂取基準は栄養価計算の元となる基準のこと。例えば、中学生の給食、完全給食一食あたりのエネルギーは820kcal、たんぱく質20〜40g、脂質はエネルギー比で25〜30%…という具合に決められています。この基準は日本人の食事摂取基準や、児童、生徒の食生活等実態調査などから得られたデータを使い、健康維持や良好な成長を促進するという観点などから算出されているものです。 食品構成は、摂取基準の栄養価を満たすために必要と考えられる各食品の量を示したものです。これを使って、献立にどの食品をどのくらい使うかを決めて、使用する食品が偏らないようにしています。 ただし、これらはあくまでも基準であり、各学校の実態や個人に合わせて、弾力的に運用することとされています。 基準が全ての人に同じように当てはまるとは限らない(というより、そんなことあるわけない)問題の解決方法は、あるのかないのか。これは永遠の課題です。 各学校の実態は、給食の摂取量や体格などからある程度つかむことはできますが、個人に合わせて、となるとなかなか難しいものです。アレルギーなどの特別な事情がない限り、個別の献立を考えることはできません。 食べない子どもに強制的に食べさせることはできませんし、プライバシーの問題や食育の観点も絡めて、食べる量を調整すること、栄養のバランスを考えて偏食はしない方が望ましいことなどを話し、自主的な行動に任せるにとどまります。(しかし、やらないよりは効果があったような気がしています。

上記のようなことを全て踏まえて献立を考えるとなると、とても難しく見えますが、実は献立を考えるのにはコツがあります。 ユネスコ無形文化遺産となった和食。このスタイルを利用することで、バランスの良い献立を作ることができます。主食、主菜、副菜、汁。(プラス牛乳。) このスタイルに沿って料理を組み合わせ、食材の分量などを調整することで、基準に近づけています。機械的に聞こえてしまうかもしれませんが、献立を考えるというよりも、パズルを組み合わせるような感覚です。 料理どうしの相性も良く、基準にもしっくりくる組み合わせはパターン化できるので、それを並び替えるような感覚でもあります。 だったら毎年、同じでも良くないか?となるのですが、それがまた難しいのです。 学校行事や食材の価格、イベント給食、カレンダーのズレ、その年の子どもの食べ具合など、様々なものに翻弄されて、結局、毎月パズルを崩しては組み直すような作業を繰り返しています。

この作業が、大変か?と聞かれれば、大変です。でも、栄養士になって栄養士として働いている人は、これが好きなはずです。私も学校で働いていた頃、この作業は大変だけど好きでした。 全ての栄養士がこの方法をとっているわけではないと思いますが、私の場合はこの方法を採用していました。少なくとも、子ども向けのバランスの良い食事を家庭でも考えるなら、この方法はおススメです。
というわけで、献立を考えるという『作業』としては、慣れると難しいわけではありません。

難しさは前述した基準の考え方や、前回書いた給食費、
食物アレルギーを含む安全管理などなど、
給食にまとわりついて離れない諸問題の中にあるのだと思います。

給食に必ず付いてくる牛乳もその一つです。
牛乳に関しては賛否両論が絶えません。牛乳に含まれるたんぱく質やカルシウムは、強い骨を作り、成長を促しているから、子どもには必要な食品だ、という賛成意見。ごはんに牛乳は合わない。そもそも、牛乳は牛の乳なのに、なぜ人間が飲まなきゃならないのか、というような反対意見。どちらも、分かるような気もしますが、まず、なぜ給食に牛乳が付くのか。

「給食に牛乳」の根拠となっているのは、学校給食法施行規則の第一条の2項、3項、4項です。完全給食、補食給食、ミルク給食すべてに、給食内容に「ミルク」という記載があるのです。前出した学校給食実施基準と食品構成はこれを根拠に、毎日の給食に牛乳を出すことを前提にして作成されています。つまり、学校給食を実施するにあたっては、基準を満たさなければならず、そして、牛乳を出さなくては基準を満たせない、という仕組みになっているのです。
基準を満たした給食を出すのが学校栄養職員の職務ですから、
周囲の声(または自分の本心)がどうであれ、給食に牛乳は必ず出さねばならない。
例え、主食がごはんのときも。ということです。

大きな声では言いませんが、飲む飲まないは本人に任されているというのが実情である、と私は認識しています。
私の経験から言うと、子どもたちは喉が渇いていれば、牛乳を飲んでしまうことが多いです。
むしろ足りないと言う子もいます。
その代わり、冬場は残す子が多くなります。それは寒いから。
試しに温めて出してみた栄養士もいると聞いたことがありますが、特に効果は上がらなかったとか。
現場としては、冬に牛乳をどうやって飲んでもらうかの方が現実的な問題のように感じます。

牛乳が身体に良いのか悪いのか。
これは一概には言えません。
牛乳に含まれる栄養素を見てみると、主成分はたんぱく質、脂質、炭水化物。
そして、ビタミン、ミネラル(特にカルシウム)が含まれているので、 栄養学的には満点の食品です。
たんぱく質、脂質、炭水化物は、消化機能に特に問題が無ければ、
またはアレルギーが無ければ、体内で消化(分解されて吸収され、エネルギーや体組織になること)されます。
この論理から言うと、そのままでは吸収されることはなく、バラバラに分解されてしまうため、
牛の乳かどうかは問題ではないと考えられます。
消化吸収の問題とは別に、乳製品と健康や疾患との因果関係についての研究論文も多数あるのですが、
これも良いという結果も悪いという結果も、両方存在します。
牛乳以外の食品についても言えることですが、食品には、100%安全で身体に良いもの、というのは存在しません。
乳製品のある成分は体に有益だけれども、別の成分は有害な可能性があるということ、
つまり、リスクをどう捉えるかという問題なのではないでしょうか。

食品の安全問題については、またいつか書きたいと思います。

学校給食と食育 その3 に続きます。

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■ 管理栄養士 高橋 玲奈 ■