前回は給食の献立と牛乳について書きました。
今回からは食育編です。
食育という言葉も、今ではすっかり市民権を得ましたが、この言葉が一般に使われ始めたのは最近のことです。
私が初めて食育という言葉を聞いたのは、まさに栄養士免許を得るために通っていた、短大の授業でのこと。
そこでもう一つ、栄養教諭というワードも初めて耳にしました。
ちょうど、食育基本法が制定、栄養教諭制度を作るために学校教育法が改正、学校給食法が改正され、
第一次食育推進計画がスタートした頃のことです。
ドミノ式に一挙にスタートしたことのように見えますが、それ以前から学校では、給食時間や関連する科目や単元で、
食に関する指導や授業は行われていました。
ただ、内容ややり方、そもそもやるかやらないかには、統一性はありませんでした(今もあるわけではありませんが)。
法整備のおかげで、学校での食育が、それ以前よりも(若干)やりやすくなったということはあると思います。
ところで、食育という言葉を聞いて、皆さんはどんなことをイメージしますか?
まずは、「食に関する教育」というようなことではないでしょうか。それも、学校で子どもに対して行われるもの。
食に関する教育というのは、そのとおりです。そして、学校がその役割を担うというのも間違いはありません。
ただ、食育基本法を見ると、食育の実施場所は学校だけではないこと、対象者が子どもだけではないということ、
実施するのも食に関する仕事をしている人だけではないことがわかります。
こんなのそもそも、法律で定義することではないよね。
法律があること自体に、は?え?なんで?と私は思っています。当たり前すぎるからです。
しかし、食の存在が当たり前すぎるがゆえ、食べることが生きることと結びつかず、ただ空腹を満たす事象として、
または1日の中の流れ作業として、消化されるだけの時間になっている人も多い、という様子は、社会を見るとなんとなく分かりますし、そういう言い方をされれば心当たりがある…という方もいると思います。
これは、食に携わる者からすれば、異常なことであり、病気になってもやむを得ないな、という光景です。
実際、指摘されなければ、または気にしなければ、自分の食の中の問題点や異常さに気がつかない人も多いのではないでしょうか。
その異常さに気づかせたり、考えさせるという意味で、食育という言葉と食育基本法は、一定の役割を果たしているように思います。

世界の料理例
もう一つ、食育という言葉の上記のようなイメージから、後回しにされているのではないかということがあります。
「食べさせて、育てる」とか「食べて、 育つ」ということです。これが無ければ、食に関する教育なんて何の意味もありません。
学校給食法の改正で、給食が食育の教材として位置付けられました。
上記の2点を実現するにはうってつけの存在であると、お墨付きをいただいたようなものかもしれません。
たしかに、子どもたちが食べて、育って、食に関する学べる材料としてはこれ以上のものはありません。
私も、子どもたちに食べてもらえること、適切な栄養バランスで健康的に育ってもらうこと、そして、何より安全であることを重視して給食を作り、それに結びつくような情報提供や指導をしていました。
給食を教材として利用したわかりやすい例を挙げると、
例えば、世界の料理。
料理を通じて、その地域の文化や食材について知ることを
目的にしています。

地産地消
また、地域でとれた食材を使った給食。
地産地消の考え方、実際に生産者さんの顔が見えるという
ことなどによって感謝の気持ちを培い、食べ物をムダにしないように導くのがねらいです。
こういうことを、日々コツコツとやっていけば、子どもたちの記憶や心に、何かは残ってくれるだろうと思います。
しかし、意外にも気がつかれていないことがあります。
学校給食は多くても、年間200回程度しかないということです。食の教育という視点からすると、相当な回数になるかもしれませんが、食事の回数とするとたったの200回。
1年間の食事の回数は、1日3食を前提にすると1095回。
給食回数は2割に満たないのです。
給食で栄養を摂っているとか、給食があると栄養バランスが整うとかという話を聞くと、それはちょっと違いますよ、
と言わざるを得ません。
食の中心はあくまでも学校の外、つまり「家庭」。
学校での食育は、あくまでも家庭で実現してもらうための材料のひとつに過ぎない、と私は考えていますが、
わかっていてもできない家庭も多い、というのが実情であるように思います。
こう書くと単に、保護者の心情的な、責任感の問題と捉えられるかもしれませんし、私も働き始めた頃は
そう思っていました。
実際は、貧困家庭やひとり親の増加、非正規雇用での仕事掛け持ちなど、金銭面や働き方から見ても、
理想の食を実現するためには解決しなくてはならない、ひとくくりにできない問題が山積みです。
そんな中で、「食べさせて、育てる」をサポートする存在として登場したのが、「こども食堂」かもしれません。
しかし、それを充実させるだけでは、根本的な解決にはならないと思います。
問題は、なぜこども食堂が必要なのか、というところにあるはずだからです。
食育をいくらすすめても、それを実現できる下地が無ければどうにもなりません。
子どもたち自身も、わかっていてもできないまま大人になってしまうこともあるかと思います。
これからの食育の課題は、理想の食を実現できる生活をいかに作るかにあるのではないでしょうか
(本来は、こちらが先なのでは…?)。
学校給食と食育 その4 に続きます。

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