
「案外、変わらないものなんだな…」ドイツのデパートで子ども用品を眺めた時の、最初の感想だ。
右と左にキッパリと分かれた「男の子」と「女の子」のコーナー、一方には緑や青、車や電車やヒーロー、もう一方にはピンクやラベンダー色、お花やハートやお姫様…ここでもか。
もちろん、「お国柄」の違いはあって、デザインは日本で見慣れたものよりも男女ともあっさりしたものが多く、私個人の趣味にはわりと合う。ここの「女の子用品」だったら、私も好んで使えそう…とは思いつつも、しかし問題はそこではない。
おもちゃも服も、「男の子のものか、女の子のものか、分かるでしょ?」と書かれているようなラインナップ。子どもの性別と「想定上の性別」が違うものを買うのは、ちょっと勇気がいる感じ。
「海外(欧米、海外の先進国)では、いかにも男の子/女の子というイメージに縛られない選択肢があって、もっといいものがあふれている」というのは、私の雑な思い込みだったんだなと知った。
子どもの遊び場で、指定された色に触る「色探し」ゲームをしていたとき、講師が「次はピンク!女の子はよく着ているよね!」と添える言葉も聞きながら、こと性別にまつわる「らしさ」について、「天国」はどこにもないのだろうと思った。
とはいえ、違いはやはりある。日本の保育園で私が見ていた感覚よりも、子どもの通園先の送り迎えは父親が多く担っている。公園でも通りでも同じで、平日夕方にもごく当然に子連れ男性の姿がある。
また、こども園では制服や指定の持ち物もない。何かとグループ分けをし、特に性別で色分けをする日本の幼稚園になじんだ私には驚くほどだった。「あの子は男の子」「あの子は女の子」という言葉は子どもからよく聞くし、意識はしているようだが、私の中にしっかりと刷り込まれた「制服も持ち物も並ぶ列も、男女で違うものである」という強さとは違う気がする。
この両方の面をどう理解すればいいのか。
少し見てみたところでは、戦後の社会での家族のあり方や性役割分担に関して、ドイツ(旧西ドイツ)と日本の共通点は多い。焦土からの復興、人手余りから女性の雇用拡大は進まず多くの女性は家庭へ「回帰」、専業主婦が多い社会をドイツも通ってきている。
そういえば、ドイツに来るに当たって専業主婦をすることになった私に、母は「この際だからドイツ婦人を見習ってしっかり家事に励んでは」との言葉を送ってきた。私は「ドイツ婦人」という言葉を知らなかったが、「家をピカピカに保ち、家庭を守るしっかり者の主婦」というようなステレオタイプのようだ。
ただ単に全面的に「進んでいる」社会があるのではなく、それぞれの事情を抱えながら歩んできて今の社会がある。
簡単に海外や異文化を比べることは難しいが、しかしそれでもいいと思うことは取り入れたい気持ちを抱えている。
参考文献 筒井淳也『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』中央公論新書
■ 小澤さち子 ■
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