
作家の山内マリコさんが書いていました。
先日、友人の出産祝いギフトという、慣れない買い物をした。
赤ちゃん向けギフトコーナーは、ピンクとブルーに色分けされている。黄色も申し訳程度に用意されているけど、あくまでピンクは女の子、ブルーは男の子の色という共通認識だ。友人のところの赤ちゃんは男の子、じゃあブルー一択でいいかというと、これがそうでもない。ピンクとブルーの性別色分けに、強い抵抗感のある人もいるのだ。さっそく襲いかかるジェンダーバイアスの荒波から、わが子を守りたいと、彼らは闘っている。100%善意で、孫に無神経な色分けギフトを贈ってしまう祖父母世代と。(朝日新聞7月25日夕刊4面)
わたしもベビー用品を贈るときは、悩まされます。男の子、女の子とわかっていても、ブルーとピンクにはしたくないので黄色にするのですが、その色がなんともさえません。もっといいデザインや色の物はないのかといつも悩むのです。
今の小中学生をみると、真っ赤なスニーカーの男の子がいるし、黒のTシャツの女の子もいます。大人の世界では、ピンクのシャツの男性も珍しくありません。どうして赤ちゃんの衣類だけピンクとブルーと性別がはっきりしているのでしょう。
わたしもデパートへ行ってみました。ほんとに、そうです。だいたい6箱ぐらいのギフトセットがひとつのシリーズになっているようですが、その内訳は、ブルーとピンクが2箱ずつ、そのほかは黄色と緑が1箱ずつ、別のシリーズでもブルー2箱とピンク2箱、そして、白と黄色1箱ずつ、といった調子です。ブルーとピンクが主流であることは確固としています。そして、模様と言えば水玉模様だったり、星のデザインだったりで、どれも一色でおとなしい感じのものです。
ロンドンにいる昔の学生に聞いてみました。すぐ、いくつかの有名なデパートのベビー用品のカタログを送ってくれました。
どこの店でも、もちろんピンク系ブルー系はありますが、それよりも性の区別のないのが目につきます。Unisexと表示されるのもあります。そう書かれていなくても、小さい家と木と動物がちりばめられたデザインのもの、風船やイチゴや野菜などの絵が一面に描かれたものなど、楽しいデザインのものが多いのです。ベビー服の胸のあたり一面に大きくウサギの絵が刺繍されたものもあり、見ているだけで楽しくなります。
送ってくれたカタログの中にはH&Mのベビー用品のもあって、たくさんベビー服が出ていますが、それらのセットの色の組み合わせだけ整理してみます。
1.2枚セットのベビー服:赤/紺
2.5枚セットAのベビー服:グレー/白/ピンク/白/白
3.5枚セットBのベビー服:赤/白/ピンク/濃い目のピンク/白
4.6枚セットのベビー服:ブルー/白/黄色/白/紺/白
1.は、たしかに伝統的な男の子の色と女の子の色の組み合わせで、いわば二項対立のものです。2. 3. 4.は、ピンクもブルーもありますが、二項対立ではなく、他の複数の色の中の1色にすぎません。
こうした性別色分けの少ない品ぞろえの中から選べるとしたら、日本のデパートよりもはるかに選択肢が広がります。ピンク・ブルーに抵抗感のある人は、とても楽になります。もらったほうも、男の子だからブルーだ、女の子だからピンクだとの決めつけや思い込みから自由になります。
まず、メーカーやデパートに言いたいと思います。赤ちゃん用品も、いつまでもピンク・ブルーにとらわれず、一般社会と同じような色遣いをしたらどうですか、また、性別にとらわれないほうが、のびのびと楽しい製品ができますよ、そうすれば、選択の幅がものすごく広がって消費者が喜びますよ、と。
それから、山内さんが書いている「100%善意で、孫に無神経な色分けギフトを贈ってしまう祖父母世代」に言いたいです。祖父母というと、高齢で頭が古くなって話が通じない人のように思いがちですが、今の出産祝いを贈る祖父母は50代か60代です。そんなに頑迷なはずはないのです。いまだにジェンダー規範にとらわれて性別色分けに諾々と従うことはやめましょう。あなたの子どもやその配偶者たちは、あなたの孫をジェンダーバイアスから守ろうと闘っている、その闘う相手があなたなんですよ、と。
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