
著者からの一言 『大工の明良、憲法を読む』
わたしは、75歳になる元大工です。25年間、72になるまで大工をやってきました。
そんな私がなぜ「憲法を読む」を書いたかです。
憲法はいまでも残念ながら、学校でしっかりと条文の内容を教えてくれていませんね。国の骨格であり、国を動かす設計図である憲法をなんで政府は教えないのだろう? 不思議に思いませんか。
理由ははっきりしています。長年日本政府を動かしつづけてきた自民党は結党当初より、党是に自主憲法制定をかかげ、いまの憲法はGHQから押し付けられたものだから変えよう、という姿勢をもっているからです。だから、いまの憲法を学校で積極的に教えないのです。だから、ほとんどの日本人は憲法を知らないのです。
私も同じでした。70になるまで憲法の具体的姿を知らなかったのです。ところが安倍首相がいまの憲法を変えようと言い出してから、「なぜ憲法を変えるのだろう? いまの憲法はいいのに。どこに問題点があるのだろう」と思い、それなら、直に憲法を読んでみようと読み出し、その背景を学んで見たのです。しろうとの目ですなおに読んでみると、びっくり、驚きの連続。しかも、人間が生きていくうえで、とても大事な価値がしっかりと書かれていたので、またびっくりです。
憲法は法律の最高法といわれていますが、内容は法律を超えて、人間の生き方をも指し示していて、下手な道徳教育をするなら、憲法教育をすればいいのに、と思うほどです。―-そういえば新文科大臣が、戦前の教育勅語をアレンジすれば道徳教育に使えると言いましたね。とんでもないですね。文科大臣に言いたいですね。憲法教育をしてください。道徳教育の代わりになりますよ、と。
たとえば24条。私は男ですが、旧姓小関です。結婚して佐藤姓になりました。ふつうは結婚すると女性が改姓しますよね。現在でも、96%近く女性が改姓しています。別姓をする人は少数です。
結婚にあたって男の私は、女が当然改姓すると思っていました。それが社会習慣だからです。何の疑問も持っていませんでした。だから、彼女が変えたくないと言い出したもんですから、困ってしまったのです。そこで結婚のノウハウ本を読んだら、女だけでなく、男も変わっていい、と書いてあるのを見て、びっくり。驚いてしまったのです。でも、よく考えたら、あたりまえですよね。男女平等ですから、いまの憲法は。
でも、この男の私が変わる、というのは大変でした。小関家は皆、大反対でした。小関家の長男が、なんで次女である佐藤家の名前を名乗らなくちゃならないのだ、ということです。向こうが一人娘で婿を取りたいというのならまだしも…、という理由です。親族会議が開かれ、私と彼女は佐藤姓を名乗る意思を確認されたのです。私たちの意志は変わりませんでした。憲法24条があるからです。裁判しても勝てるからです。
こうして、私の改姓が決まったのです。もし、男女平等の憲法がなかったら、この難所は乗り越えられなかったと思います。そう、戦前であれば、親族会議の圧力の中で、私たちの意思はくじけていたと思います。
私は小関家の長男として、家を継ぐものとして厳しくしつけられたので、家父長制度に反発して育ったのです。それだけ改姓にこだわったわけです。いま思うと、古い体制との闘いという背景があったと思います。まだまだ、暮らしの中での家父長制度の習いは根強いものがあります。憲法は、個人が自由を求めて生きる上で、支えになってくれるのです。
考えてみませんか。この本を通して、私たちのくらしの中の問題で、どのように生きたらいいかを指し示しているのかを。
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