東京医科大の入試で、女性受験者に男性受験者より高い合格ラインを設定していたというニュースには、本当に腹が立ちました。女性受験者が男性受験者と同じように勉強して同じような力があっても、女性は合格できない、女性の方が男性より高い得点でなければ合格できない、たとえて言うと、女子受験者は100点取らないと合格できないが、男子受験者は90点で合格できるということ。

 こんなバカな話があるのでしょうか。ハンデをつけられた女性受験者が腹を立てることは当然ですが、男性受験者も、自分たちをバカにしていると怒って当然なやり方です。女男どちらにとっても腹立たしい、大学側の悪意極まりない不正入試です。しかも、文科省が調査し始めると、順天堂大学、昭和大学でも同じ差別をしていたことが明るみに出てきました。まだ出てきそうな気配です。

 私が腹を立てているのは、入試差別だけではありません。
 ひとつは、その差別を正当化しようとする考えです。女性は医師になっても、結婚すると当直もさせられないし、子供ができるとやめてしまう、安定した人員配置ができない、しわ寄せが男性医師に来る、だったら、医師になる女性は多くないほうがいい。だから点数に差をつけて女性の合格を減らす、というもの。

 でも、女性医師が結婚し、子供ができると辞めざるを得ないのは、女性の医師のせいではありません。医師の働き方が男中心に回ってきているから女性が続けられないのであって、女性が辞めたくて辞めていくわけがない。そこを考えず、女性差別をして女性が医師になる道を狭くしている。男性医師だって、子育てをしながら自分の子どもの成長に係わるというまたとない機会をみすみす放棄して、過酷な労働環境に甘んじている。家事育児万端背負いこんでくれる専業主婦がいるから、どうにか男性医師は働けている。そういう非人間的な働きかたが前提となって、女性の合格点を高くするという姑息なやりかた‥‥‥、それが腹立たしいのです。

 現に女性の医師が男性と同じぐらいか、それよりも多く活躍している国はたくさんあります。スペイン、オランダ、チェコ、ハンガリー、ポーランド、フィンランドでは、女性医師が50%以上。イギリス、ドイツ、オーストリアでは、45%以上が女性医師です。日本の女性医師の比率は悲しいことに20%。
 https://www.joystyle.net/articles/364

 これらの国では、女性医師が結婚するのも子どもを産むのも当たり前、子育てもちゃんとできます。子供ができてやめる方が珍しい。つまり、その社会の働き方の問題なのです。

 もうひとつ腹が立つのは、それをあたかもなんの不思議もない慣習であるかのように平然と続けてきた男たちに対してです。

 この不正がいつから行われてきたのか、いくつの大学で行われているのか、今のところ明らかになっていませんが、少なくとも東京医大、順天堂大、昭和大では入試のたびに点数の操作がされてきました。それを実施してきた大学の執行部・学長・教授会のメンバー、そのあたりは、最高の知識人の集まりのはずですが、女性差別の入試をおかしいと思ってこなかったのでしょうか。理事長にしても学長にしても、妻もいるでしょうし娘もいるでしょう。うすうすは知っていた教授たちもいるようですが、おかしいという声は上がらなかったらしい。そのことが腹立たしいのです。

 10月30日の毎日新聞に、「不合格女性24人受験料返還要求 東京医大に」という小さな記事が出ています。2006年から18年に受験し不合格になった女性24人が、成績の開示、受験料の返還、慰謝料など合計769万円の支払いを求めて通知書を同大に提出したというものです。数日前の新聞では、点数操作がなければ、去年と今年だけで60人ぐらいは合格したはずという数字も出ていましたから、24人というのは少ないと思いますが、少なくともこの24人の女性たちは、理不尽な東京医大の差別で、人生を大きく狂わされた可能性が高い人たちです。24人で769万円、ひとりにして32万円。素人の目には、受けたダメージの大きさに比べて一桁も額が違うような気がしますが、弁護士が代理人になって大学側に文書を手渡したそうですから、根拠のある数字なのでしょう。

 それくらいの金額を大学から得たからと言って、傷は癒えもしないでしょう。私としては、24人と、その後ろにいるもっと多くの不正によって不合格になった女性たちの人生が、あんな女性差別の東京医大なんていかなくてよかった、と言えるものであってほしいと願うばかりです。