
労働運動史には、ほとんど女性が登場しません。個人として名前を残している圧倒的多数の人々は男性です。それは、労働組合の指導者の多くが男性だったからでしょう。しかし、近代日本の発展を支えた産業には多くの女性労働者がおり、戦後に組織された労働組合や労働争議にも、女性たちはたしかに存在しました。
本書は、1970年代から80年代にかけて全国各地に広がった「男女雇用平等法」制定運動に焦点を合わせ、労働運動に携わってきた12人の女性たちから話をきき、それらを再構成してまとめたものです。雇用平等法をという要求は、結局、男女雇用機会均等法の制定と一般女性保護規定の廃止という帰結をもたらし、運動は挫折しました。だから、彼女たちの闘いの軌跡は、成功物語でも「輝かしい」ものでもありません。しかし、真摯な姿勢に満ち満ちています。彼女たち一人ひとりが、困難な課題に直面し、人生に向き合い、そのなかで悩み、とまどい、決断し、果敢に考え抜き、実践してきたからです。この経験を風化させてはならないと、つくづく思います。
個々の「聞き書き」を読み解くガイドとして役立つ論文も、本書には収録しています。随所にコラムを、巻末には年表と資料を掲載しました。労働組合の学習会や、労働運動について学ぶ学生たちのテキストとして、ぜひ役立ててください。
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