フランスの同性婚と親子関係――ジェンダー平等と結婚・家族の変容

著者:イレーヌ・テリー

明石書店( 2019-02-11 )


2013年、フランスでも、「みんなのための結婚法」が成立し、同性婚が認められました。本書は、新しいジェンダー・アプローチから、同性婚が認められるまでの法的・社会的な歴史を紐解くとともに、男女平等の時代における生殖補助医療・親子関係の法的矛盾を明らかにすることで、家族法の抜本的改正のための議論の枠組みを提示しています。

日本でも、同性愛カップルが、結婚し、親になる権利を実現するためには、同性婚、生殖補助医療、養子縁組関連の法改正が必要です。そのために、本書で紹介するジェンダー・アプローチと、フランスの同性婚にまつわる議論は大いに参考になります。

本書は、フランスのジェンダー研究の第一人者イレーヌ・テリーによる、本邦初翻訳です。巻末には、訳者による、原書にはないフランスの結婚・家族・養子縁組・生殖補助医療の資料が追加されています。

●帯文句
同性婚、そして親になる ジェンダー・アプローチからみる結婚と家族の歴史
●著訳者
イレーヌ・テリー著
フランス国立社会科学研究院研究指導教授。法社会学を専門とし、フランスにおける結婚・家族・ジェンダー研究の第一人者。主要著書にLe démariage(『脱結婚』オディール・ジャコブ社、1993年)、La distinction de sexe(『性の区別』オディール・ジャコブ社、2007年)、Les humains comme les autres(『他の人と同じ人々』フランス国立社会科学研究院出版、2010年)など。

石田久仁子 訳
翻訳家。訳書にシモーヌ・ヴェーユ『シモーヌ・ヴェーユ回想録』(パド・ウィメンズ・オフィス、2011年)、フランソワーズ・エリチエ『男性的なもの/女性的なもの Ⅰ、Ⅱ』(共訳、明石書店、2017年、2016年)、編著に『フランスのワーク・ライフ・バランス』(共編、パド・ウィメンズ・オフィス、2013年)など。
井上たか子 訳
獨協大学名誉教授。訳書にシモーヌ・ド・ボーヴォワール『決定版 第二の性 Ⅰ、Ⅱ』(共訳、新潮社、1997年)、同『モスクワの誤解』(人文書院、2018年)、フランソワーズ・エリチエ『男性的なもの/女性的なもの Ⅰ、Ⅱ』(共訳、明石書店、2017年、2016年)、編著に『フランス女性はなぜ結婚しないで子どもを産むのか』(勁草書房、2012年)など。

●目次
序文 「みんなのための結婚」をめぐる大論争
男女の自然的差異 VS 性の無差別化/パックスと同性カップル/ジェンダーと家族、歴史の欠除
第一章 ジェンダー関係アプローチ 二つのレベルのジェンダー/人のアイデンティティとしてのジェンダー/社会的関係のあり方としてのジェンダー/性別に関わる関係の四つの形/男女の二元性を超えるものとしての、性の区別/序列と不平等、権威と権力の区別/属性か、役割配分か/役割についての別の考え方
第二章 性的平等と結婚の変貌 結婚から脱結婚へ/結婚とは何かは誰もが知っているはずだ/近代自然法の「原初の家族」/民事婚の中核をなす父子関係の推定 /婚姻外の母子関係と父子関係/婚姻内の母子関係と父子関係 /婚姻秩序と男女の序列/一つの「全体」としてのカップルから二重奏カップルへ/カップル関係の制度としての結婚/脱結婚の時代
第三章 生殖、子をなし親になること、「みんなのための親子関係」 /同性愛者 VS 異性愛者/スケープゴートの論理を解明する/「本当の親」についての議論の罠/親族体系の忘却と子どもをつくることの自然主義化/婚姻親子関係モデル/養子縁組は、もはや子どもの歴史を消去しない/「見ざる聞かざる」モデル/女性による提供/フランスの生殖補助医療に関する法は本当に「倫理的」なのか/ドナーを介して子どもをつくることを認めるために
結論 家族法の改正に向けて
巻末資料
訳者あとがき