生きづらいでしたか?: 私の苦労と付き合う当事者研究入門

著者:細川 貂々

平凡社( 2019-02-22 )


 ずーっと生きづらくてしんどくありませんでしたか?
 著者の細川貂々さんは、母親から「あなたは何もできない子だからお母さんが全部やってあげる」「人に妬まれないようにネガティブな自分を演出して生きなさい」と言われて育ちってきました。お母さんに言われたとおり、うれしい時、楽しい時も否定して生きてきた貂々さんは、やがて大人になってから、「私なんてダメ人間だから」と自分のことも否定するようになり、でもそんなネガティブな自分がイヤでイヤで苦しんできました。
 本書のタイトルの『生きづらいでしたか?』は、「ずーっと生きづらくてしんどくありませんでしたか?」という、これまでの貂々さん自身への問いかけであり、同じような「生きづらさ」を抱えた読者の人への言葉でもあります。
 物語は、そんな貂々さんが、たまたま参加した大阪の「当事者研究会」で、「てんてんさんのネガティブ、大事にしてくださいね」と言われたことからはじまります。「自分でもイヤでイヤでしょうがないネガティブを大事にするってどういうこと? ネガティブなのはいけないことなんじゃないの?」と衝撃を受けた貂々さん。自分の、そしてあなたの抱える「生きづらさ」の根っこは何なのか――貂々さんは「当事者研究」を始めた「べてるの家」向谷地生良さんを訪ね、自らの「シアワセ」とは何かを探求していきます。
 「当事者研究」は、苦労や困りごとを抱えた人が、仲間と一緒にその苦労のメカニズムや意味を考える活動です。もともとは統合失調症やアルコール患者の自助活動として始まりましたが、本書は、自閉症スペクトラムやアスペルガーなどの発達障害を抱えた人、「ポジティブになれない」「自分のことが大キライ」といったマイナス思考に悩む人たちへ、生きづらさとの付き合い方をやさしく提案する作品になっています。
 生きづらい自分の助け方を知りたい人に、そっと寄り添う一冊です。

■目次
なんだか生きづらいなあと思ってここまで来ました 
第1章 てんてんさんのネガティブ、大事にしてくださいね 
――てんてん、当事者研究に出会う
何もできない子 
大人になってネガティブうず巻きへ 
ネガティブな自分を認められない 
はじめての当事者研究       
第2章 当事者研究って何ですか? 
――てんてん、「べてるの家」へ行く
一緒に行きましょう 
当事者研究のはじまり 
自分を助けるプログラム 「べてる」の当事者研究 
向谷地生良さんに聞いてみた 当事者研究って何ですか? 
苦労をみんなで語り合う 
人とふれ合う時間 
当事者研究の理念  
「弱さ」の情報公開 
 経験は宝 
 笑う力 
「見つめる」から「眺める」へ 
 主観・反転・“非”常識 
 人とことをわける 
川村敏明先生に会う      
第3章 当事者研究、どうやるの? 
――てんてん、「NPOそーね」へ行く 
「そーね」の場ができるまで 
社会と擬態できる人たち 
みんなズレてるから良い 
「対人間」にしない 
みんなで分かち合う 
当事者研究でこう変わった――一ノ瀬さんの場合 
私 ゆがんでた と気づける場  
第4章 当事者研究、やってみよう 
――てんてんのシアワセ研究
当事者研究は場所に応じて変化する 
私の48歳1年間でシアワセだと感じたこと研究 
ぼっち研究してわかったこと 
「生きづらさ」の根っこ 
あとがき