大沢真理(おおさわ まり)最終講義 2019年3月6日
タイトル 「グローバル・インクルージョンへの日本の課題」

日時 2019年3月6日(水) 14:30−15:15
場所 東京大学本郷キャンパス 福武ラーニングシアター

退職年月日 2019年3月31日
専門分野 社会政策の比較ジェンダー分析

 国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)は、主として途上国の課題であり、日本を含む「先進国」にとっては国際協力の領域であるとみなされがちではないだろうか。だがそれらの達成は、まぎれもなく日本国内の課題でもある。また、目標17項目は並列されているが、たとえば第5項目のジェンダー平等の実現は、少なくとも第1(貧困撲滅)、第2(飢餓の根絶)、第3(健康と福祉)、第4(教育)の諸項目の中心的な局面にほかならない。

 これにかんしてイギリスの経済学(批判)者ケイト・ラワースの『ドーナツ経済学』(2017年)は、資源や環境を地球システムが包摂できる範囲に収め、人類の全員が経済的にも文化的にも排除されないというSDGs17項目の構造を、求心力に富むイメージで示している。

 報告者は従来、日本の生活保障システムについて、ジェンダーの視角から、OECD諸国との比較や時系列の比較検討をおこない、その深刻な機能不全ないし逆機能を指摘してきた。ドーナツ経済学に触発され、本報告ではグローバル・インクルージョンに向けて日本の生活保障システムに求められる課題を考察したい。

プロフィール
1953年4月 群馬県渋川市に生まれる
1969年3月 渋川市立北中学校卒業
1972年3月 東京学芸大学附属高校卒業
1976年3月 東京大学経済学部卒業
1981年3月 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得大学
1981年4月 東京大学社会科学研究所助手
1985年4月 東京都立大学経済学部助教授
1987年6月 経済学博士号(東京大学)を取得
1988年10月 東京大学社会科学研究所助教授(以後、1998年4月より教授を経て2019年3月末まで在職)
1992年冬学期 ベルリン自由大学客員教員
1994年冬学期 ボッフム大学マリー・ヤホダ国際女性学客員教授
1997年よりアジア工科大学院大学「ジェンダーと開発専攻」客員教員
2005年10月~2014年9月 日本学術会議会員(第20-22期)、第22期は第一部副部長
2015年10月より日本学術会議連携会員
2006年5〜7月 ドイツ・ハンザ先端研究所フェロー
2009年10月~2014年度 社会科学研究所全所的プロジェクト研究「ガバナンスを問い直す」プロジェクトリーダー
2015年4月~2018年3月 東京大学社会科学研究所長
2015年6月~2018年6月 ドイツ研究振興協会Deutsche Forschungsgemeinschaft (DFG)のMercator Fellow
2018年度  東京大学 大学執行役・副学長

受賞
1993年度(第13回)山川菊栄賞 『企業中心社会を超えて―現代日本を<ジェンダー>で読む―』時事通信社
2014年度(第6回)昭和女子大学女性文化研究賞(坂東眞理子基金)『生活保障のガバナンス―ジェンダーとお金の流れで読み解く―』有斐閣

主要著作
『イギリス社会政策史―救貧法と福祉国家―』東京大学出版会、1986年5月
『企業中心社会を超えて―現代日本を<ジェンダー>で読む―』時事通信社、1993年8月
『男女共同参画社会をつくる』NHKブックス 2002年9月
『現代日本の生活保障システム 座標とゆくえ』岩波書店、2007年3月
“Social Security in Contemporary Japan, A comparative analysis,” London and New York: Routledge/University of Tokyo Series, 2011
『生活保障のガバナンス―ジェンダーとお金の流れで読み解く―』有斐閣、2013年12月
『災害・減災と男女共同参画:2019年2月1日 第30回社研シンポの要旨;「2017年度女性・地域住民から見た防災・災害 リスク削減策に関する調査」報告』(編集)、東京大学社会科学研究所研究シリーズ第66号、2019年3月、48+82頁
  https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/publishments/issrs/issrs/pdf/issrs_66_01.pdf