2010.03.26 Fri
女性がケア労働をするのは、家父長制や権力によって強いられた選択のためなのでしょうか。それとも「ケア=女性の責任」という規範を内面化した女性の自発的選択のためなのでしょうか。本書で試みたのは、この二つの説明のどちらにも依拠せず、性別分業の再生産メカニズムを説明することです。女性は限られた選択肢のなかで試行錯誤しながら生きていくうちに、育児や介護というケア労働を担うことを選択している。また性別分業を不都合なものとみなせば、手持ちの資源を用いて現状を変えようと試みてもいる。私はこうした実践を、ポスト構造主義フェミニズムの「エージェンシー」概念を用いて説明しました。前半では家庭のケア、後半では社会化されたケアを対象に、性別分業の再生産における女性のエージェンシーを明らかにし、またワーカーズコレクティブや男性ヘルパーの実践をめぐる事例研究から、性別分業の変動の
可能性についても考えました。(山根純佳)
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