2010.04.04 Sun
アメリカの食べものと言えば、ハンバーガーやピザ、ホットドッグなどを思い浮かべるのでは? 多くは移民起源の料理ばかり。でも、アメリカの歴史を「食文化」というレンズでみていくと、過去には「アメリカ料理」としてのニューイングランドの食を守ろうという運動が起ったりもしている。本書は、そうした運動にもかかわらず最終的には自分たちと異なる移民たちのの食文化を取り入れるに至った長い歴史を論じている。 本書は食文化だけを論ずるのではなく、食文化の変化を「アメリカ人とは何か」という視点から議論を展開している。さらに本書は「アメリカ料理」を形成していく過程で大きく関わったのは女性であることを重視する。なぜなら家庭で調理するのは大抵が女性であり、多くの場合、家庭料理は祖母や母から娘や孫娘へと伝えられてきたからだ。また20世紀への世紀転換期においては、アメリカの家政学者たちは、食のアメリカ化運動も積極的に行い、「アメリカ料理」をつくろうとした。その試みは失敗に終わったけれども、家政学者というのは、教育を受けるようになった女性たちが就くことのできた職のひとつだった。
アメリカ大陸「発見」から合衆国の設立までを論じた第1章から、加工食品でつくる手づくりの家庭料理、そしてファーストフードや食品産業の拡大など、トピックは幅広い。特に興味深いのは、第二次世界大戦後、巨大食品企業がアメリカの食生活を支配していくようになる過程。これら加工食品が受け入れられた理由として主婦・母親の役割の多様化、「女性らしさ」の信仰、労働市場への主婦の進出がある、と本書は指摘する。アメリカの食の歴史を知るなら、まずはこれ!(mooty)
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