福島の原発事故被災者レポート(1)
「●●大学の●●と申します。●●協会のMLに投稿しようと思ったのですが、断念しました。「どうか安全だと言ってください」というのが空気のようなので、事実はともかく…。何かのご参考になれば。
2011年3月、福島市の放射線量が事故前の600倍となった。
福島市は安全なのか?このままここに住んでいいのか?
私はその答えを渇望し、大学の先生が多く登録をするとあるメーリングリストへ疑問を投げかけ、受けた回答がこれだった。
2011年3月11日、午後2時46分。
東北地方を中心に、大地震が発生した。
私は9階建てのビルの5階でデスクワークをしていた。
そのビルは2011年1月に完成し、耐震構造にはなっていたものの、大きな縦揺れと横揺れが続き、とても立ってはいられないほどだった。
子どもは大丈夫なのか?学校は倒壊していないか?
私は職場から2キロ先の小学校に通う子どもの安否が気になった。
携帯から学校の電話番号を選択し、呼び出そうとするものの、ディスプレイには「切断中」の3文字が映し出されるばかり…。
そんな中、誰ひとりとして帰宅することなく業務を遂行していたため、私は仕方なく定時まで仕事を続けた。
5時15分。
終業のベルとともに職場を離れ、子どもが通う小学校を目指し自転車を飛ばした。
「ママ、遅い!!」
耐震工事のために建てられた仮設のプレハブ校舎から子どもが駆け寄り、「なんでもっと早く来なかったのよ!!もうみんな迎えに来て最後だよ!!」と泣きじゃくった。
マグニチュード9という日本周辺における観測史上最大の地震のあと、福島市の空は不気味な濃いグレーの色となり、横殴りの雪が舞った。

原発事故前の穏やかな日常
「夕飯の買い物をしなくちゃね」と近所のスーパーに向かうと、いつもなら車でいっぱいの駐車場はガランとしており、店舗ははすでにシャッターが下ろされていた。
仕方なく家路を辿ると、ところどころ、民家のブロック塀や屋根瓦が崩れているのが目に入った。
我が家と小学校の間には、私の実家があった。
私たちは被害がないのかを尋ねるために立ち寄った。
「停電してるから今日はここに泊まったほうがいい」と弟が宿泊を促すので、そうすることにした。
実家には石油ストーブがあった。
「石油ストーブはこういうときに役立つな」と、そこで湯を沸かし、家族でそばをすすった。
情報源は小さなラジオだけだった。
私たちはテーブルにロウソクを灯し、家族全員で小さなラジオに耳を傾けた。
ラジオからは宮城県沖での被害が延々と語られていた。
その悲惨な現状に、時折、アナウンサーの声が震え、涙声となっていた。
「宮城は大変なんだな」
その後に起こる未曾有の原発事故のことなど想像だにもせず、他地域での被害を哀れんだものだった。
その間も幾度となく押し寄せる余震。
熟睡することができないまま朝を迎えた。
「水も止まった!!」と弟が言うので、携帯で給水車情報を検索し、バケツや電気ポットを手に、給水車のある場所へと向かった。
そんな中、「原発が危ないらしい!!」という情報がネットに飛び出した。
「福島から逃げたほうがいい」という話も出だした。
「え!逃げる?どこまで逃げればいいの?」
原発についてまったく知識のなかった私には寝耳に水だった。
私はまず自分が住む福島市が原発から何キロ離れているのかを調べた。
それは60キロだった。
一旦我が家に戻り、地震により散らばった部屋を片付けていると、突然、電気が回復をした。
早速テレビを付けると、ヘルメット姿のアナウンサーが福島の原発事故の話をしていた。
私の耳に飛び込んできたのは「原発の建屋が吹き飛んだ」というフレーズだった。
「建屋が吹き飛ぶ?それは爆発をしたということなのか?」
私はネットに張り付き、原発に関する情報を集めた。
放射線の単位にはじまり、外部被ばく、内部被ばく、年間許容線量、被ばくの症状、ホットスポット等等。
そうしている間にも、福島市の放射線量はググッと上昇し、毎時24.24マイクロシーベルトを表示した。
福島市は安全なのか?このままここに住んでいいのか?
私は大きく動揺した。

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