今年6月23日で、男女共同参画基本法施行から20年。
熊本日日新聞に寄稿した記事を先方の許可を得て、転載させていただく。
掲載は、2019年6月23日第9面。
続く差別 限度超え#Me Too
「男女共同参画はわが国21世紀社会の最重要課題のひとつ」と謳った基本法の成立から、20年。今や「あらゆる分野における男女共同参画」は、国策となった。2003年に第3次国内行動計画でうちだされた「202030」(2020年までにあらゆる分野における指導的地位に占める女性の割合を30%に)を、安部政権は引き継いだ。「202030」と聞いたときに、わたしの最初の反応はなぜ「202050」ではないのか?というものだったが、それどころではない。
「202030」と言えば来年である。政治、行政、教育、企業等のあらゆるデータが、達成は不可能であると告げている。とはいえ、組織論における3割は、少数派が少数派でなくなるクリティカル・マス。女性が3割占めれば組織文化が変わる、と言われている。
だが昨年の#MeTooにひきつづく東京医科歯科大不正入試事件で、医学部の女子学生数がゲート・コントロールされていることが発覚した。それ以前から女性医療者ネットワークでは、医師国家試験の女子合格者比率が3割までは達したものの、長期にわたってそれ以上増えないことに疑問を呈してきた。東京大学の女子学生比率も、長期にわたって2割を超さない。
入り口のところでコントロールされているのではないか、という問題意識から、日本学術会議のジェンダー研究分科会を中心に、6月8日に「横行する採用・選考における性差別--統計から見る間接差別の実態と課題」と題する公開シンポジウムを開催した。間接差別とは、個別には直接差別を証明できなくとも、応募者性比と採用者性比とのあいだに統計的に有意な差を認めることができた場合に、差別の疫学的証明ができることを言う。
社会学者の大沢真知子さんは民間企業の総合職採用の競争率が男子30倍に対して女子44倍という数値を示した(2014年厚労省)。企業の人事担当者のあいだでは「優秀な順に採ればほとんど女になってしまうから、男に下駄を履かせている」という声が、半ば公然とささやかれている。改正均等法で「募集・採用」の性差別は当初の努力義務から禁止規定になったのに、均等法にはほとんど実効性がないと見えて、女子枠、男子枠がどの企業にもありそうだ。公務員採用だって、どんな情実が働いているか、わかったものではない。
メディア研究者の林香里さんが指摘したのが、マスメディアの男性中心的な組織文化である。性差別の報道をするなら、まずマスコミ各社が、応募者性比と採用者性比の情報公開をしたらどうか?やましいことがなければ、できるはずだろう。
誰もが暗黙のうちに認めていて、しかたないと受け入れてきた不当な慣行や組織文化を、東医大問題は明らかにした。他の分野でも、暴けばいろいろな不公正や差別が横行していることだろう。社会は遅々として変わらないように見えても、女性の受忍限度はあきらかに低下している。もうがまんできない、と声を挙げたのが#MeToo運動だった。
昨年の国会で候補者男女均等法が成立した。努力義務のみで罰則はない。だが、今年の参院選でどの政党がまじめにこの法律を遵守するか、監視しよう。
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