
性別によって求められる役割や進路選択,そしてときに期待のされ方まで違う日本.しかし当事者は,案外そのことに気が付かぬまま大人になることが多い.けれど「男の子なんだから泣いちゃダメ!」「女の子なんだからお行儀よくしなさい」と親をはじめとする大人に言われた経験を持つ人は少なくないのではないだろうか.
また進路を決める際に,男の子は浪人や下宿を認められやすいのに,女の子だと現役かつ,家から通える大学への進学を望まれるケースが多いとも言われている.また医師を目指そうとする女の子に,「看護師のほうが女子に向いている」と進路指導の先生に言われたり,「家族を将来養うためには一流企業に、そのためには一流大学へ」と親に言われる男子も多い.そう,この国では,性別によってあきらかに期待される役割や将来像が違うといっても過言ではない.
そのため「男らしくあれ」という見えない圧力に窮屈な思いをしたまま,また一方で自分を窮屈しているものの正体が何かわからないまま大人になる男子も多い.
そこで本書では,男性学の視点から進路・生き方をとらえなおすとともに,若者へのエールをこめて新しい男子のありようを提言する.著者はこの本を著す目的について次のように述べている.
「・・・「男」という性別が,男子の生き方にどのような影響を与えるのかを解説し,男子に自分の進む道について落ち着いて考える機会を提供することです.性別が自分の生き方に与える影響の大きさについて理解できるようになれば,「女」という性別が女子の生き方にどのような影響を与えるのかも考えることができるようになるはずです.そうした想像力は,これからの社会を生きていく上で受験よりもはるかに大切なことだと思います.」
本書は,10代の男の子たちのためだけの本ではありません。女の子にもぜひ読んでもらいたいと思います.また若者だけでなく,いままさに子育てをしている親たち,そして保育や教育現場にいる人たちにも薦めたい一冊です.
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