2010.05.29 Sat
ある日、三年前に病死したはずの妻から手紙が届く。そんな設定で始まるゲーム。一緒に再訪しようと約束しながら果たせなかった思い出の地、サイレント・ヒルであなたを待っている……。困惑しつつ車を走らせた主人公・ジェイムズが目の当たりにしたのは、霧に包まれ、陰惨に変貌した町。顔をつぶされた死体に、人を襲う顔のないモンスターたち……そして、妻メアリーに瓜二つの女性、マリア。
ホラーは苦手な私だけれど、この作品だけはお勧めしたい。怪物よりも、幽霊よりも恐ろしいのは人間の心の闇。だからこそ、上質のホラーは時に、人の心の生み出す悲劇をリアルに描く。妻は本当に三年前に死んだのか、手紙を送ってきたのは誰なのか。死と罪悪の支配する悪夢の町で、ジェイムズは妻の存在を探し求める。あちこちに感じられる妻の、甘く、切ない痕跡。ひとつひとつ、ふたりの思い出をたどり思いだす作業。「深淵に見つめられることを恐れる者には、深淵を覗き込むことはできない」――
最愛の妻ともう一度出会うためには、己の心の弱さと向かい合うことが必要だった。それが分かった時、全ての悪夢もモンスターも、必然の存在だということが腑に落ちる。
字幕付きの英語のせりふ、美しい映像と音楽といったしかけが、ストーリーの魅力を高め、エンディングでは映画を見たような充実感が残る。ゲームをされる方はぜひ一度試してほしい。ただし、怖がりの人には、私はみぞおちのあたりがきゅっとして仕方なく、妹と二人でないとプレイできなかった…という警告を申し添えておく。
(おそらくwanの読者の中には、アンジェラという女性の扱いに不満を持たれる方も多いだろう。これは好意的な見方かもしれないけれど、ジェイムズに複数のエンディングが用意されているように、また、この物語のもう一人の主人公であるマリアが、「それはあなたの妄想、私の未来じゃない。それでいい」とつぶやくように、アンジェラたち他の登場人物にも、私たちの知りえない世界での別のストーリーがあったのではないか。そう、思いたい)
(ちびがえる)
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