内縁・事実婚・同性婚の実務相談~多様な生き方を支える法律,社会保障・税金~

著者:小島 妙子

日本加除出版( 2019-12-06 )


 著者の小島妙子弁護士は、本サイト「お助けWAN」で法律相談を担当している。近年、「婚姻外カップルの多様化に伴い、それらの具体的な結合のあり方に即して、いかなる法的効果を、どの程度与えるべきかが今日的な問題となっている」という。

 民法では内縁関係について規定を設けていなかったものの、1958年、最高裁は「男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合」として「内縁準婚」判例を示した。しかしその後、「パートナーシップ」関係にある婚姻外カップルへの「内縁準婚」理論の適用を否定する判例や、他方、同性カップルについて「内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められる」として、関係の「一方的破棄・解消について不法行為の成立」を認める判例も出ている。

 本書では、内縁・事実婚とは何か。その法的規律の沿革について述べ、具体的な民法上の権利・義務について「Q&A」で詳しく説明する。さらに社会保障や税法上の問題の事例を紹介した後、婚姻外カップルの多様化が進む現在、今後のあり方をめぐる学説を紹介する。

 現実は理論を越え、一歩先を歩んでゆく。家族形態が多様化する今、さまざまな選択に公平な権利が誰にも保障されるよう、的確な法的保護を基礎づけてほしいと願う。

この本では、48の事例を挙げ、「Q&A」で、わかりやすく説明する。現実の家族には、こんなに複雑で多様な形態があるんだなと、読んで改めて思う。

同性パートナーシップの登録制度を法制化する動きは、残念ながら、まだ見られないが、地方自治体レベルでは注目すべき制度が登場している。東京都渋谷区は、2015年4月、「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を施行。同年11月、世田谷区は、「世田谷区パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」に基づき、「パートナーシップ宣誓」を行い、区が「パートナーシップ宣誓書受領証」を交付する制度を、すでに開始している。

多様な婚姻・家族の形態を認め合うこと、セクシュアル・マイノリティの人々の権利擁護が今後の課題となるなか、当事者やその子どもたち、周りの支援者が、今、まさに悩み、困っていることを解決するための、的確な手引き書となる、おすすめの一冊。ぜひお読みください。