*こちらも「お助けWAN」の相談コーナーに来ました。上野がお答えした方がよいと判断しましたので、こちらに掲載します*

WAN相談
こんにちは。珠里/東京都足立区/16歳 です!

私は小さい頃からフェミニストでした。
なので自分でネットで情報などを集めたりしましたが、最近気づいたことがあります。
「次の時代を担う中高生の届く所に、知っておかなければいけない情報がない!」

今、家庭科の授業で男女差別、ジェンダーについてやっていますが、載っている情報は日本の男女の所得格差や「女は家の中、男は外」ということしか載っていません。男女平等まで100年かかると言われている理由はここにあると私は気づきました。

次の世代の人たちが十分な知識がないということです。教科書に載っている2つもすごく重大な問題です。ですが正直なところ、所得格差など私たち高校生はまだ感じだことがなく、同情できないのです。そして、私は思いました。
中高生の手の届くところに情報を提供したい!

私は男女差別のことで一番ショックだったのはFGMと児童婚のショッキングな事実です。私より小さい何万人の子たちが麻酔なしで切除されていて、私と同じくらいの子たちが結婚させられています。年齢が私と同じ、下の子たちが被害にあっていると思うと許せない気持ちが燃え上がりました。

男女平等の問題は、あまりにも大きな問題で沢山人々に知ってもらわないと解決はできません。ですが次の時代を担う学生のうち、何%の人がこの厳しい現実を知っているのでしょうか。

そこで私はウェブサイトを作って、学生たちに知ってほしい情報を書き、広めたいと思いました。が…どこから始めれば良いのかわかりません。名前はもう決まっていて「The Next Generation Feminists」です。
どこから始めればよいのか教えていただけると幸いです。
珠里

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東京都足立区在住16歳珠里さん、こんにちは。
 相談コーナーに投稿していただいた内容、前回の女子高生からの相談と似ていますので、わたしが答えることにしました。こちらもついでにチェックしてくださいね。

女子高生への手紙 栃木県18歳七海
https://wan.or.jp/article/show/8835

前回の18歳七海さんから、今回の16歳珠里さん、WANにいただいた投稿では最年少記録かもしれません。
高校で家庭科共修が始まったのはようやく1994年のこと、そのなかでジェンダーについて述べられているのはほんのちょっと。もっと知りたい!という気持ちはわかります。でも読みたい本、読める本がない!という叫びも。

実は大学へ行けば、ジェンダー関連の研究書や論文はやまのようにあります。でも待っていられない。それだけでなく、わたしは大学でジェンダー論を教えながら、大学に来てからでは遅いんだけどなあ…という気持ちを持っていました。
なら、もっとわかりやすい本を十代向けに書いてよ。はいはい、お怒りはもっともです。上野の本は1ページに3度辞書を引かなきゃ読めない、などと言われましたからね
。 でもね、ないしょだけどたったいま十代向けの本『女の子はどう生きるか?教えて、上野先生!』(仮題)を岩波ジュニア新書で書いているところ。もうじきできるから、ちょっと待ってね。

それになんてったって、勉強は現実から出発するのが一番。あなたがショックを受けたっていうFGMと児童婚(何かわからない読者は、すぐにググってね。今は情報をゲットするのがとってもかんたんになりました)は、外国の話。不当な扱いを受けている世界中の女の子を助けてあげたいけど、まだ力不足。まず自分の生きているあしもとの現実について勉強しましょう。

なぜお父さんはしごとから帰ったらごろごろしてTVの野球中継ばかり見てるのか?なぜお母さんばかりこまねずみみたいに朝から晩まで働いているのか? なぜお母さんの文句をお父さんはスルーするのか?お兄ちゃんは勉強だけしていればいいのに、なぜわたしばかりお手伝いさせられるのか?なぜ女の子は浪人はだめよ、と言われるのか? なぜ東大に行きたいというと、お嫁に行けないよと言われるのか?…考えてみたら、疑問がやまのように出てくるでしょう。なぜ?なぜ?なぜ? という問いに対して答えを与えてくれる情報はネットや本からいっぱい手に入れられます。

それだけでなく、こんなことがうざい、あんなことがイヤだ、やりたいことを自由にやれるようになりたい…って思うよね?半世紀前のわたしたちも同じように思っていました。だけど何か言うと、「なまいき」とか「女らしくない」と言われました。だから言いたいことを口にしても浮かないなかまをこっそり集めて、ぐちと文句の言いたい放題をやりました。やってみるとわかったことがあります。え、あなたも、あなたも、そうだったの?わたしだけじゃなかったんだ、って。こういう集まりをあとで英語でconsciousness raising groupと呼ぶことを知りました。そんな英語を知らなくても、わたしたち、とっくにやってたんです。そして「これってわたしがヘンなのかな」と思ってたことがそうじゃなかったんだという発見を、フェミニズムはThe personal is political(個人的なことは政治的なことだ)という標語で表していることを知りました。

いつでもどこでも、何歳でも、差別はイヤ、という気持ちは「わたし」から出発します。そこをすっとばして知識だけ身につけてもムダ。珠里ちゃんもなかまを集めて、「これってヘン」「もやもやする」「こんなのイヤ」のやりとりをやってみたら?そして、なぜこうなの?いつからそうなの?どうしたら変えられるの?と考えるときに、初めて知識は役に立ちます。
もし近くにそんなお友だちがいない、とか、そんなことを口にしたら引かれる、というのなら、世界は広い!ネットを使えば、きっと同じようなことを考えているなかまに出会えます。実は私たちがWANをつくったのはそのため。あなたもそう考えてウェブサイトをつくりたいと思ったんだよね。
交流サイトをつくればかんたんだけど、いっそのことWANのサイト上で#The Next Generation Feministsってキーワードでコーナーつくっちゃったら? リンクを張ることもできます。WANにはその装置があるから、どんどん活用してください。オネエサン、オバサンたちがお手伝いしますよ。

The Next Generationが抱える問題は、上の世代の女が抱えた問題とは違うはず。問題の解決法も違うはず。でも上の世代の背を見て学ぶことはあるし、これは「やめとこう」と学ばないこともある。わたしたちもそうしてきました。わたしたちの前にがんばって社会を変えてくれた先輩たちがいたから、わたしたちはゼロからスタートしなくてすんだし、次の世代に今よりちょっとでもましな社会を手渡したいと願っています。わたしがフェミニストを名のるのは、わたしの前にいたオネエサン、オバサンたちに恩義があることを忘れないためです。

自分の問題は自分にしか解けません。16歳からスタートするのは決して早すぎることはありません。こんなことしてみたい!って提案があったら寄せてください。お待ちしています。