もうお読みになった方もいると思いますが、お奨めの本を紹介させてください。
『デンマークの女性が輝いているわけ~幸福先進国の社会づくり』(澤渡夏代ブラント、小島ブンゴード孝子、大月書店)です。
やれ「北欧ってすてき」だの、「BIがあればいいのに」だの、「オランダのワークシェアリングっていい」だの、キーワードには飛びつくのに、それがどのような基盤で生まれたのかには無関心な女性のなんと多いことか(これ、某テレビ番組のフレーズのパクりです)。
オランダのワークシェアリングは、労働時間差別の禁止によるパートの均等待遇と労働時間を働き手が選べる仕組みによってパートの権利を強化し、 (企業ではなく)働く側がライフスタイルを選べる力を強化したことが大きかったわけですが、その基盤になった労組や女性運動の役割は無視して「ステキ」を連発し、日本の経済界が便乗して進めた日本型ワークシェアリング(=非正規化)を放置して雇用の劣化を招いた私たちの歴史を忘れてはなりません。
そのころ私は、オランダでの取材も盛り込んだ『ワークシェアリングの実像』(岩波書店)という本を出し、その構造分析から、そんなもんいまのままの日本でやったらエラいことになりまっせ、と書いたのでしたが、「ステキ」派の女性たちはほとんど読んでくれませんでした。
といった個人的な逆恨みはさておき、この本は、デンマーク在住の女性二人がその「ステキ」の理由を、根っこから、やさしく、鋭く、ときあかしてくれます。
みなさんは、デンマークでは労組の51%は女性が占めているって、知ってました? デンマークは取材に行ったこともあり、労組の組織率が高いことは知っていましたが、女性の方が多数派とは…。この本を読んで初めて知りました(恥)。
パートも福祉労働者も日本の正社員と同様の長期雇用ですから労組にも入って当然で、となれば産業構造が変わってケア労働の需要が増えると労組の女性比率が上がり、労働条件の改善に女性の視点がしっかり入ってくる、ということですよね。
「ステキ」に終わるのでなく、足元から、地道に、日本の何を変えなくてはいけないのか、を考えるヒントをたくさん提供してくれる本です。
◆データ
書名 :デンマークの女性が輝いているわけ~幸福先進国の社会づくり
著者 :澤渡夏代ブラント・小島ブンゴード孝子
頁数 :264頁
出版社:大槻書店
発行日:2020年6月17日
定価 :1980円(税込)