
今から25年前、東京の東中野という街で加納穂子さんはこの本の表紙にも載っているチラシをいたるところで配りました。当時、穂子さんは1歳にも満たない子どもと二人きりのシングルマザーでした。専門学校に通いたい、自分の時間が欲しいと思っていた穂子さんはチラシをまいて自分が家にいない間、子どもの保育をしてくれる人を募集しました。最初は少なかったけど人が人を呼び、「保育人」はたくさん東中野の家にやってきました。次第に彼らは自らを「沈没家族」と名付けました。この本は、そこにいた赤子だった僕、加納土が沈没家族の記録と記憶をまとめた一冊です。
僕は、この「沈没家族」を昨年ドキュメンタリー映画にまとめて全国で公開しました。たくさんの方が映画を観にきてくれました。映画を、沈没家族を外に出していく過程で考えたこと、いただいた感想を受けて僕が感じたことも本に書きました。
映画では沈没家族を始めた母・穂子さんや、20年ぶりに再会した保育人たち、離れて暮らしていた「父」に話を聞きました。ただ、93分の映画の中ではまとめきれない様々な側面が「沈没家族」にはあることも痛感していました。この本では、映画では描けなかった僕の母・穂子さんの育った家族についても書きました。穂子さんの母、そして僕の祖母は昨年2月に亡くなった加納実紀代さん。偉大な女性史研究者である実紀代さん(僕はみんばと呼んでいました。)と穂子さんの関係から「沈没家族」が生まれたヒントを感じました。
沈没家族ってなんだったんだろう?という僕の知りたい、会いたいから書き始めた一冊ですが、書き終えた今、この本は今を生きる人たちにとっても子育ての可能性、親子の関係などヒントになることがたくさんあると思います。ぜひ読んでいただければと思います。
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目次
はじめに 15年ぶりの答え合わせ
第1章 沈没家族(土=8ヶ月~2歳半)
第2章 加納家のこと(土=誕生前)
第3章 土の発生(土=0ヶ月~8ヶ月)
第4章 戦友、めぐ(土=2歳半~8歳)
第5章 八丈島(土=8歳~18歳)
第6章 父・山くん(土=腹の出た20代)
第7章 保育人たち(土=子どもから大人へ)
第8章 劇場公開(土=監督になる)
第9章 人間解放(土=これから)
あとがき
◆データ
書名 :沈没家族 子育て、無限大。
著者名:加納 土
出版社:筑摩書房
発行日:2020年8月31日
定価 :1600円(税別)
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