すべての息子たちには母親がいます。人が生まれて初めて経験する男女関係がそこにある以上、母と息子の関係性がジェンダーの領域におよぶことは自明の理です。けれども、フェミニズムはその基本的な関係性に十分に目配りをしてきたとはいえません。

 私は家族を研究する社会学者として、親子の関係性を長年観察し研究を続けてきました。そこで残念に感じた現実がありました。ジェンダー平等を理念として理解し、自らは実践しているにもかかわらず自身の子どもとの関係性において、不平等の再生産をしている理知的な女性たちの姿です。人間の関係性を一世代にして変えることは容易ではないのです。

 でも、本当に何かを変えたいと願うなら、自らが痛みを背負い深いレベルで気づき、実践をしなければ真の変革はやってきません。その相手は目の前にいる子どもや夫であったりするはずなのです。一歩踏み出してみれば意外と簡単で、周りの人はあなたの姿に力を得て自らも動き出すでしょう。小説やドラマに登場する魅力あるクールな人に、いますぐ、あなたがなればいい。

 この本のタイトルにドキドキして、読むのが怖いと思っている方にこそ読んでほしいと思います。大丈夫です、そんなにキツイことは書いていません。私たちはゆるやかにつながって互いに助け合い、巨大な抵抗勢力に立ち向かう必要があります。仲間は多い方がいい。新しい社会構築への一歩を踏み出すためにも、読んでいただけたらうれしく思います。そして、かつての息子であった男性にこそこの問題を共有してほしい。

 フェミニズムとは、決して女性のためだけにあるものではないのですから。