「あめいろぐ」とは何ですか、といわれてしまいそうだが、「アメリカで働く日本人医療従事者によるブログ」の略で、あめいろぐ。海の向こうで活躍する日本人医師らによる情報発信サイトだが、その書籍版であり5冊目になる。今回のテーマは「女性医師」。

皆さんも「女医」という言葉があるのに、なぜ「男医」という言葉ないのか、疑問に思ったことはないだろうか。2018年の女性医学生受験差別問題の報道にみられるように日本の医師社会は一般社会以上に男性社会であり、男性の現場にあとからやってきた存在は「いまだにストレンジャー」であり、ゆえに「女医」という特別な呼び名があるのかもしれない。実際、日本の医師に占める女性割合は2割程度、OECD最下位であるし、本来医師ほどプロフェッションの確立された専門職はなく、能力や適性さえあれば、性別によらず活躍できるはずだが、現実はそうではない。

しかも女性医師の場合、「結婚」「妊娠・出産」「育児」などの時期と研修や専門医取得のキャリア開発時期が重なり、生活とキャリアの両立がことのほか難しい。特に日本では20代までは医師に占める女性医師割合は35%であるのに、30歳以降一気に20%台に下がる。つまりキャリアを諦め、家庭を優先する傾向がみられる。一方、厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」を立ち上げたが、その議論にこのような女性医師の切実な声を反映した話はどうも希薄のようだ。

本書では、自由と平等を掲げるアメリカ社会の医療セクションにも性差別やバイアスがあり、そうした中でもキャリア確立している4名の日本人女性医師に「ガラスの天井の実際」を語ってもらい、「女性医師の特性(強み・価値)」「仕事と生活のバランス」「女性医師が活躍するために今できること」など、現実に生きる知恵を紹介している。
 
           (担当編集:いち編集部のリアル)

◆書誌データ
書名 :あめいろぐ女性医師
監修者:反田 篤志
著者名:宮田 加菜,中嶋 優子,兼井 由美子,長阪 美沙子
出版社:丸善出版
刊行日:2020/9/30
定価 :3850円(税込)