2010.10.29 Fri
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〈”タッタラッタ、タッター” 新聞によりますとぉー〉ではじまる、女性の事件簿のようなコーナーをもつ番組を覚えている人はどれくらいいるでしょうか?30年以上もたって、土曜の深夜(まだ、子どもの頃だったので、深夜だったのだけど、11時くらいからの番組だった?)に、親には見ていることがばれてはいけないと、こっそりみていた番組のことを思い出した。それもたしか、事件に至るまでの「真相」をドラマじたてでお茶の間に(といっても、自分の場合はこっそり隠れてみていたのだけど)流していた。
角田さんの小説には、ザ・家族というよりも、ぼんやりとした〈家族的なもの〉を描いたものが多い。『三面記事小説』は、おそらく誰もが記憶の片隅にあるような本当にあった六つの事件から、角田さんが想像した背景を、娘だったり、恋人だったり、息子だったり、母だったりする主人公の一人称の語りで表現されている。一つ一つの短編が始まるまえに、新聞記事の切り抜きがコラージュされていて、本を斜めにしたりして、その事件の内容をまず読みたくなる。そして、読者は事件が起こった後から、事件にいたるまでに主人公たちの内面で起っていたことを遡っていく。
前者のテレビ番組で、見てはいけないものだと感じていたものが、もっと鮮烈に、覗いていけないのに、それでもやはり知りたいこととして、わたしたちに迫ってきます。一人語りで描かれているこの小説は、わたしたちの日常にも生じる小さな出来事もまた、さまざまな葛藤の、偶然生じた帰結であることを教えてくれます。(moomin)
タグ:角田光代