「カサンドラ症候群」とは、発達障害特性のあるパートナーと安定的な関係を築くことの困難を感じている人々が抱える重いストレスを原因とする、身体的・精神的症状である。

2016年の発達障害者支援法の改正によって、「発達障害者への支援は社会的障壁を除去するために行う」という理念が追加され、社会全体での発達障害のある人への支援が強化された。

この頃から、「発達障害」がメディアで多く取り上げられるようになったが、正しい理解が浸透している状況には及ばず、かつ、当事者への支援体制はまだまだ不十分な状況にあるなか、当事者家族やパートナーが受けることのできる公的支援は極めて少ない。 加えて、パートナー間の「問題」は家庭外からは見えづらく、周囲からの理解や支援を得にくいことから、孤立し追い込まれカサンドラに陥り、症状が重篤化していくケースも少なくない。

本書では、カサンドラへの支援活動に取り組んでいるカウンセラーが、4000名近いカサンドラへの支援の現場から見えてきた「課題」と「問題への対応策」を、具体的なケースを挙げながらわかりやすく解説している。

筆者は、性別による固定的役割分担がカサンドラ症候群の一因であると考察し、発達障害特性への対応策を列挙した従来のカサンドラ症候群に関する書籍にはなかった「ジェンダーの視点」を盛り込み、社会的に刷り込まれた「べき論」を解放し、多様なパートナー関係のありかたを踏まえて、自らが主体となる人生を手にすることが本質な意味での問題の解決と訴える。

本書は、カサンドラ症候群を入り口とした、人生の指南書ともいえる。

<目次>
第1章 夫の言動に悩んでいるのは、あなただけではありません
第2章 夫に発達障害特性があっても同居はできる
第3章 別居することで手に入る穏やかな夫婦生活
第4章 離婚も前向きな選択肢の一つ
第5章 ゴールは自分が主人公の人生