
この本を作るきっかけは今をさかのぼること10数年前のこと。
「(前略)女性学の講義は大学に入ってからしかない。18歳で進路がほぼ決まってしまうこの社会では、大学に入ってから女の人生について考えても遅い。それより若い年齢で女のおかれた状況を知り、自分が何をしたいのか、自分に何ができるのか、を考えてもらいたい(後略)」(『ユリイカ』2006年9月号)。
著者が書いたこの一文に出会ったことだ。その通りだと思った。私自身、18歳で女性学に出会って、自分の内外で感じるもやモヤモヤしたものの正体が見えるようになった。そうすると「私」を主語にして物事を考えられるようになった。
すぐに著者に執筆依頼の手紙を書いた。しかし多忙を極めた著者に会うことすらなかなか難しかった。でも、書くことは約束してくれた。それから幾星霜。
ある日の昼下がり・・・だったように思う。当時、高校3年生だった娘がボソッと言った。
「A子さ~、お母さんに言われたんだって。進学するなら、短大にしなさいって。お兄ちゃんは男だから大学だけど、あなたは女の子だし、そんなに頑張る必要ないって。めっちゃ怒ってた。だから絶対、家から通えない大学に入って、家から出てやるって言ってたよ」と。
それからも時々娘の話から、ビックリするような「今」を思い知らされた。この時代に、そんなことを言う人・・・いるんだ! いったい、いつの時代の話? ここは昭和? それとも大正? 明治時代? なのか、と驚いた。そして冒頭の一文がよみがえった。あらためて著者に連絡をすると約束を覚えていてくれた。東大祝辞でバズって高校生に知名度があがった直後だった。
読みやすさを考えて、Q&A方式にしようという著者の提案を受け、高校生を対象にした著者の講演会をはじめ、あちこちで取材を行い、生の10代の声を集めた。そうして集めたリアルなモヤモヤ、悩み、疑問を「学校で、なぜ女子は男子の次?」「家のなかでモヤモヤするのはなぜ?」「リア充になるってけっこうたいへん?!」「社会を変えるには?」の4つにわけ、それらすべてに全力でお答えいただいた。
お読みくださった方から、いくつかのQに対して、「まだこんなこという人いるの?」という素直な問いが届く。しかし、現実なのだ。そう、あなたが誰の足も踏んでいないからといって、ほかの人も同じとは言えないのだ。「男の子たちにも読んでもらいたい」という中学生からの感想もあった。ここまで、いい方向に変わったこともたくさんある。でも、まだまだなところもある。その「まだまだ」を変えていく力を、この本を読んでつけてもらいたい。10代だけでなく、また親子でも、三世代でも読みあう意味のある1冊だ。
(やました・まちこ/岩波書店ジュニア新書編集部)
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