
この1月に、日本学術会議問題についての論考集『学問の自由が危ない──日本学術会議問題の深層』(佐藤学・上野千鶴子・内田樹 編)を刊行しました。この問題の背景にあるものはなにか、学問の自由とはなにか、なぜそれが重要なのかを、主に学術界の識者の方々にご寄稿いただいたものです。
以下に目次をご紹介します。
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1 学術総動員体制への布石 上野千鶴子
2 日本学術会議における「学問の自由」とその危機 佐藤学
3 政府が学問の世界に介入してきた 長谷部恭男+杉田敦
4 任命拒否の違法性・違憲性と日本学術会議の立場 髙山佳奈子
5 学問の自律と憲法 木村草太
6 日本学術会議とジェンダー平等 後藤弘子
7 日本学術会議と軍事研究 池内了
8 酔生夢死の国で 内田樹
9 学術会議だけの問題ではない三つの側面 三島憲一
10 「学問の自由」どころか「学問」そのものの否定だ 永田和宏
11 文化的適応としての科学と日本学術会議 鷲谷いづみ
12 1000を超える学協会の抗議声明から読み取れること 津田大介
■資料編
任命拒否を受けた6人のメッセージ(芦名定道、宇野重規、岡田正則、小澤隆一、加藤陽子、松宮孝明)
公表された声明文から(法政大学総長、日本ペンクラブ、現代歌人協会・日本歌人クラブ、映画人有志)
日本学術会議による「要望書」
日本学術会議法
声明を公表した学協会一覧
日本学術会議問題 日録
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内容についてご紹介しましょう。上野先生の「学者は権力には仕えず、真理のみに仕える」、佐藤先生がおっしゃる火刑に処されたブルーノ・ジョルダーノとの共通点、内田先生の「著しく国益を損なう行為」というご指摘も重要ですが、そのほかにも長谷川・杉田先生の「国家でも市場でもない、自律的な市民共同体の必要性」、後藤先生の「ジェンダーバランスにおける学術会議の先進性」、鷲谷先生の「レイチェル・カーソン『沈黙の春』を支持した科学者たちの研究作法」、永田先生の「批判精神こそが学問の基本」、津田大介さんの「学術会議問題だけでなくここ数年の安倍菅政治の総括としても読める」との指摘も的を射ており、単純に学術会議問題を軸にした政権批判のみならず、学術の意義について広く学べる教養書として読める内容となっています。とくに、後藤先生、高山先生、鷲谷先生の論考は、ジェンダー論の観点からも、WAN関係者にとっては必読の内容と言えます。
日本学術会議問題は、会議の要求に対していまだに政権からの返答もなく、論点をずらすことによって、学術会議潰しの機会を狙っています。学術会議が要求している期限の4月までの6名の任命を勝ち取り、学術・教育の世界の自律性を守るためにも、ぜひともご一読いただけるとさいわいです。
晶文社編集部 安藤聡
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